3月17日、「最高裁判所の『中華人民共和国不正競争防止法』の適用に関する若干問題の解釈」(以下、『解釈』という)が公布され、2022年3月20日より施行された。『解釈』は29条からなり、改正後の不正競争防止法を踏まえ、不正競争防止法第2条、冒用・混同、虚偽宣伝、ネットワークの不正競争等の行為の認定に焦点を合わせて精細化している。
不正競争防止法の施行後、中国裁判所は一般条項(不正競争防止法第2条)を新たなタイプの不正競争行為の認定の一つの主要な法的根拠としたが、裁判基準の不統一が時折発生していた。そのため、『解釈』は、市場の競争秩序を乱し、その他の経営者又は消費者の合法的権益に損害を与えた経営者の行為が不正競争防止法第2章及び専利法、商標法、著作権法等の規定行為に属しない場合、裁判所は一般条項を適用して認定することができると規定した。
最高裁判所民事第三法廷の責任者は、この規定は一般条項と具体的行為の条項、知的財産権法との適用を明確にし、また不正競争防止法や商標法等その他の知的財産権法に対する一般条項の補完的な位置づけを明確にしたと述べている。
裁判所は一般条項を適用して市場競争行為の正否を認定するが、その核心は経営者が商道徳に反しているかどうかの判断である。『解釈』は、不正競争防止法にいう商道徳は日常的な道徳倫理基準とは異なり、特定の商業分野において一般的に遵守され、受け入れられる行動規範であると明確にしている。また同時に、裁判所が事案の具体的な情状を踏まえ、業界ルール又は商習慣、経営者の主観的状態、取引先の希望、消費者権益や市場秩序、公益に与える影響等の要素を総合的に勘案し、法に基づいて経営者が商道徳に反するかどうかを判断すると規定している。
中国の裁判所は2021年に8654件の不正競争紛争の裁判を終了し、その中で冒用・混同案件の割合が高かった。『解釈』は主に不正競争防止法第6条の「冒用・混同」に関する規定を精細化し、「一定の影響力のある」標章の概念と認定基準を明確にして、また、使用や登録が商標法によって禁じされる標章は不正競争防止法の保護対象ではないことも明確にしている。さらに『解釈』は市場主体の登録管理条例を参照しながら保護対象となる市場主体の名称の範囲を細分化している。
近年、ネットワークの不正競争紛争が日増しに増えている。インターネット技術とビジネスモデルの更新や発展のスピードを見据え、『解釈』はさらに新しい行為を列挙するのではなく、立法趣旨と競争政策を厳密に把握し、司法実務上の経験を適時にまとめ、法適用の条件を適切に精細化し、司法裁判に必要なガイドラインを提供するとともに、市場の自主規制と技術革新のために余地を残している。
紹介によると、『解釈』は最高裁判所が知的財産裁判機能の役割を十分に果し、新分野、新業態の司法へのニーズに適時に対応するための重要措置であり、不正競争防止への司法の強化、競争政策の基盤の強化、高効率化・規範化された公平な競争を促す国内市場の構築に対して重要な意義を持つものである。(中国最高裁から翻訳)