最高裁判所は7月30日、4件の「一体式自撮り棒」と称する実用新案権(専利番号ZL201420522729.0)に係る侵害係争について公開判決した。この4件は専利権者の源徳盛ゴムデジタル(深セン)有限公司がそれぞれの製造者、販売者を訴えた権利侵害訴訟である。
最高裁判所知的財産法廷は2019年の設立以来、源徳盛ゴムデジタル(深セン)有限公司を原審原告とする専利権侵害上訴案件100件余りを受理しており、その大半は個人経営の小売商を被告として提起されたものである。今回の一連の案件の審理において、最高裁判所知的財産権法廷は全国の技術系知的財産権上訴案件を集中的に管轄する優位性を十分に発揮し、同一専利権について全国範囲で提起された民事権侵害係争に関する裁判結果の統一化に基礎を築いた。
侵害品製造者が故意に権利侵害を行い、権利侵害を繰り返した場合、法定賠償額を高めに確定する。
上訴人の中山品創ゴム製品有限公司と被上訴人の源徳盛ゴムデジタル(深セン)有限公司、原審被告の劉涛氏との係争案件において、原審裁判所の広州知的財産権裁判所は「一、中山品創ゴム製品有限公司は、本判決の発効日より、源徳盛ゴムデジタル(深セン)有限公司の所有する本件専利権を侵害する製品の製造、販売を停止し、且つ在庫の権利侵害製品を廃棄すること。二、中山品創ゴム製品有限公司は、判決発効日より10日以内に、源徳盛ゴムデジタル(深セン)有限公司に経済的損失及び権利保護のための合理的費用計100万元を賠償すること。三、劉涛氏は上記第二号の中山品創ゴム製品有限公司の債務について連帯責任を負うこと。四、源徳盛ゴムデジタル(深セン)有限公司のその他の訴訟請求を棄却する」と判決した。中山品創ゴム製品有限公司は原判決を不服として最高裁判所に上訴した。
審理の結果、最高裁判所は、中山品創ゴム製品有限公司による侵害被疑品の製造販売は源徳盛ゴムデジタル(深セン)有限公司の所有する専利権を侵害するものであり、且つ故意の権利侵害、重複する権利侵害の情状があるため、法律規定の範囲内で賠償額を高目に確定すべきと認め、上訴を棄却し、原判決を維持すると公開判決した。
二審で最高裁判所は次のように判断した。本件に係る専利は実用新案であるが、複数回の無効審判を経て、専利権の状態が安定している。中山品創ゴム製品有限公司は侵害被疑品の販売のみならず、製造行為も実施しており、侵害品の製造者であり、知的財産権侵害の大本である。本件訴訟の前に、中山品創ゴム製品有限公司は本件専利権を侵害したとして民事権侵害訴訟の被告として2度にわたり提訴され、且つその発効判決で中山品創ゴム製品有限公司の関係活動は本件専利権を侵害したと明確に認定されたにもかかわらず、同一専利権を侵害する製品の製造販売を継続し、複数様式の侵害品を製造販売しており、中山品創ゴム製品有限公司は主観的に本件専利権を侵害する故意を持ち、且つ権利侵害を繰り返している。これは深刻な権利侵害の情状に該当する。よって、経済的損失の賠償額は法律規定の範囲内で高めに確定すべきとする。
侵害品の小売商の賠償額は総合的に酌量すべき。
上訴人の源徳盛ゴムデジタル(深セン)有限公司と被上訴人の銀川市西夏区先鋒電器販売部、銀川市西夏区宏宇立信通迅店、銀川市西夏区金城通迅部それぞれとの3件の係争において、被上訴人はいずれも個人経営商工業者である。審理の結果、最高裁判所は、権利侵害者が侵害品の販売で得た利益は少なく、権利侵害の期間も短く、主観的な悪意はそれほどでもなく、権利侵害の情状が軽く、現地の経済発展レベルが低いなどの情状に鑑み、原審裁判所で判決した2000元の賠償額を維持した。
賠償額を合理的に確定し、市場競争秩序を守る。
最高裁判所は判決で以下のことを明らかにした。
「厳格保護」は中国知的財産権司法保護の基本方針である。専利権のイノベーションの高さや権利侵害の情状などにより、保護の範囲と強度を合理的に確定し、科学技術の成果に関する知的財産権の保護範囲・強度とそのイノベーションの高さ及び貢献度を適応させ、イノベーションを奨励し、故意の権利侵害を取締り、秩序ある公正な市場競争秩序を維持する目的を果たすことが「厳格保護」の本義である。
大本から権利侵害を取り締まるには、権利侵害に対して権利を主張する専利権者ができる限り侵害の根源を探る、即ちできる限り権利侵害行為の大本にある製造者に対して権利を主張し、大本から専利権侵害行為を制止すべきである。また一方で、裁判所は専利権侵害係争を審理する際、権利侵害行為の性質、情状を区分して権利侵害者の法的責任を合理的に確定するほか、専利権者に侵害品の製造段階で権利侵害行為を制止させるように、専利権者を積極的に導くべきである。