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北京市高等裁判所が『インターネットに係わる知財権案件の審理指南』を公布

時間:2016-05-12

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   プラットフォームプロバイダはインターネットサービスを提供する際、オンライン販売者による商標権侵害行為の実施を教唆・幇助した場合、オンライン販売者と一緒に連帯責任を負わなければならない。4月13日、北京市高級裁判所が『インターネットに係わる知財権案件の審理指南』を公布し、ネットに係わる知財権案件の審理を規制した。

 この度公布された『審理指南』は三つの部分、計四十二条からなり、ネット上における著作権、商標権、不正競争の紛争の注目点、法律難題に係わるものである。北京市高等裁判所民三廷の潘偉廷長補佐によると、2015年、北京市の裁判所が新規受理した一審知財権民事案件は同期比24.1%増で、うちネットに係わる知財権案件は比較的大きな割合を占めている。ネットに関する新しい技術、形態、要素の出現に伴って、従来の分野と異なる「新しい現象」が数多く現れている。ネットに係わる知財権司法保護に対する公衆の新しいニーズに応えるため、知財権司法保護は新しいチャレンジに直面している。このような紛争を適切に処理するため、北京市高等裁判所は2014年に研究グループを設置し、ネット知財権紛争における多発的問題を全面的に整理し、系統的に調査・研究し、専門学者、弁護士、企業および業界の意見を広く聴取すると共に、複数のルートで意見公募を行い、十回に及ぶ調整の結果、この『審理指南』を制定した。

 潘廷長補佐によると、ネットを利用した商品販売モデルは既に普及しているが、プラットフォームプロバイダの行為の性質と責任の判断はこれまでずっと裁判実務上の難題となっていた。ネット上の商標権に係わる部分では、『審理指南』はこうした案件の審理には利益バランス原則と合理的予防原則を適用すべきだと指摘し、プラットフォームプロバイダの実施した行為が直接権利侵害になるか否かの挙証責任、「有効な通知」の認定、「誤った通知」の法的結果、プラットフォームプロバイダの「知る」についての判定要件とアプリ商品又はサービスの類似性判断などを規定している。知財権保護を強化し、権利侵害行為を効果的に取り締まるため、『審理指南』はプラットフォームプロバイダがオンライン販売者の具体的な情報について挙証責任を負わなければならないと規定し、かつ権利者に対する「通知」の方式、内容、法的効力と「誤った通知」による法的結果について詳しく規定している。

 プラットフォームプロバイダが故意に言葉、技術サポートの推薦、ポイントの奨励、サービスの提供などの手段を利用してオンライン販売者の商標権侵害行為の実施を誘導しまたは唆した場合、オンライン販売者の権利侵害行為を教唆したと認定できる。プラットフォームプロバイダは、オンライン販売者がネットサービスを利用して他人の商標権を侵害することを知りながら、削除、遮断、リンク切断などの必要措置を取らず、または引き続き技術やサービスのサポートなどの幇助行為を提供した場合、オンライン販売者の権利侵害行為を幇助したと認定できる。上記二つの行為を実施したプラットフォームプロバイダはオンライン販売者と一緒に連帯責任を負わなければならない。

 プラットフォームプロバイダはオンライン販売者がオンラインサービスを利用して商標権侵害行為を実施していることを知っていたか否かを如何に判断するかについて、『審理指南』は次のように規定している。この「知る」は「明知」と「知り得る」を含む。たとえば、権利侵害被疑行為に関する取引情報がウェブサイトトップページ、コラムのトップページ又はその他目立つ位置に掲載されている場合、プラットフォームプロバイダが自ら権利侵害被疑行為に関する取引情報を編集、選択、整理、ランキング、推薦又は修正などを加えた場合、権利者からの通知を通してプラットフォームプロバイダが権利侵害被疑の取引情報や取引行為がそのネットサービスを介して送付、実施されたことを十分にわかる場合、ブランド品やサービスが明らかに非合理的な価格で提供された場合などは、権利侵害か否かを認定する際に裁判所が総合的に判断する。

 商標権のほか、『審理指南』はネット著作権、不正競争に係わる紛争についても規定している。ネット著作権部分は主に、著作権者とネットサービスプロバイダの挙証責任の分担、ネットサービスプロバイダの行為の性質の認定、「分業と協力」の判定方法、権利侵害要件と責任免除要件の適用関係、ウェブサイト「スナップショット」の合理的な利用、ネット生放送行為の法律適用など六種類の問題について規定している。ネット上の不正競争部分は、当該紛争の基本的な判定規則、「公認の商業道徳」の認定、不正競争防止法第二条における虚偽宣伝行為と商業上の誹謗行為に対する具体的な認定情状、有料検索エンジン登録(Paid Listing )行為の法的規制、賠償額の算出など五種類の問題について規定している。