 
        中国最高裁判所は10月11日、「最高裁判所のインターネット裁判所の管轄に関する規定」(以下、「規定」という)を公布し、インターネット裁判所の管轄権を調整、改善した。「規定」は2025年11月1日より施行する。
中国最高裁判所は2018年9月、「最高裁判所のインターネット裁判所の案件審理に関する若干の規定」(以下、「2018年規定」という)を制定、公布し、インターネット裁判所の所在都市の管轄区域内において基層裁判所が受理すべきオンラインショッピング、オンラインサービス、オンライン融資、オンライン少額融資、インターネット上の著作権、ドメイン名、インターネット上の権利侵害、オンラインで購入した製品の製造物責任、インターネット公益訴訟など11種類の紛争は、インターネット裁判所が一元的に管轄することを明確にした。「規定」は、「2018年規定」に定められたインターネット裁判所の管轄範囲に基づき、サイバー空間のガバナンスをめぐる新たな状況やデジタル経済発展の新たな要求を踏まえ、インターネット裁判所の管轄案件の類型を最適化するものであり、「インターネット上の紛争はインターネット上で審理する」という効率的で便利な審理メカニズムを強化するとともに、新しい、最先端の、複雑で、規範として重要な意義があるインターネット案件の審理に集中することを推進するものである。
「規定」は4条からなり、インターネット裁判所の案件管轄範囲、合意管轄規則、上訴審理メカニズム等を明確にしており、主な重点内容は以下のとおりである。
第一に、新たに4類型のインターネット案件をインターネット裁判所が一元的に管轄する。「2018年規定」を基礎に、「規定」は、「インターネット上のデータの所有権帰属、権利侵害、契約紛争」、「インターネット上の個人情報保護、プライバシー権侵害」、「デジタル資産の所有権帰属、権利侵害、契約紛争」、「インターネット上の不正競争紛争」をインターネット裁判所の管轄範囲に収めた。「規定」施行後、北京市、杭州市、広州市の管轄区域内において基層裁判所が審理すべき上記の案件は、それぞれ3つのインターネット裁判所が一元的に管轄する。新しい、最先端の、重要なインターネット分野の裁判ルールについて効果的に模索し、規範・指導および促進・保障の役割を発揮し、サイバー空間のガバナンスをめぐる新たな要求にタイムリーに応え、デジタル経済の健全な発展を保護する。
第二に、一部の案件をインターネット裁判所の管轄範囲から外した。「規定」は、「2018年規定」に定められたインターネット裁判所所管の「契約の締結及び履行のいずれもがインターネット上で完了する融資契約紛争・少額融資契約紛争」、「インターネット上で最初に発表された著作物の著作権又は著作隣接権の帰属紛争」、「インターネット上で発表又は配信されたオンライン作品の著作権又は著作隣接権を侵害したことにより生じた紛争」、「電子商取引プラットフォームを通じて購入した製品に欠陥があり、他人の人格権や財産権等を侵害したことにより生じた製造物責任紛争」並びにインターネット上の名誉権、一般的人格権、財産権の侵害などの従来型のインターネット上の権利侵害紛争を削除した。「規定」施行後、北京市、杭州市、広州市の管轄区域内の前記案件は、地域管轄や指定管轄などの基準に従い、関連基層裁判所が受理することになる。従来通りの通常のインターネット案件はその他基層裁判所で審理し、新しい、最先端の、複雑なインターネット案件はインターネット裁判所で審理することで、インターネット裁判所が新たなインターネット分野での権益保障に関する人々の法的ニーズに、よりタイムリーかつ効果的に応えられるようになる。
第三に、4類型の案件は引き続きインターネット裁判所が管轄する。「規定」は「2018年規定」の一部を変更せず、北京市、杭州市、広州市の管轄区域内において基層裁判所が審理すべき以下の4類型の案件は、引き続きインターネット裁判所が一元的に管轄することを明確にした。具体的には、「ドメイン名の権利帰属、権利侵害、契約紛争」、「電子商取引プラットフォームを通じて締結又は履行されるオンラインショッピング契約によって生じた紛争」、「契約の締結及び履行のいずれもがインターネット上で完了するオンラインサービス契約紛争」、「検察機関が提起するインターネット公益訴訟」を含む。インターネット裁判所は、オンライン審理に適した上記案件を引き続き一元的に管轄することにより、「インターネット上の紛争はインターネット上で審理する」という作業メカニズムを継続的に強化し、司法上の利便性を向上させる。
第四に、インターネット裁判所が管轄する行政案件、外国や香港・マカオ・台湾に係わる案件の範囲を調整した。民事案件の管轄調整に合わせ、「規定」はインターネット裁判所が管轄する行政案件、外国や香港・マカオ・台湾に係わる案件の範囲も同時に調整した。行政案件について、インターネット裁判所は、その所在都市の管轄区域内において基層裁判所が受理すべきインターネット上のデータの監督管理、インターネット上の個人情報の保護・監督管理、インターネット上の不正競争の監督管理、インターネット上の取引の管理、インターネット情報サービスの管理などの行政案件を一元的に管轄する。このことは、インターネット監督管理行政法執行の監督管理をサポートし、管轄区域内での法執行の司法基準の統一を促し、総合的なインターネットガバナンス体制を健全化し、改善することに資するものである。外国や香港・マカオ・台湾に係わる案件について、インターネット裁判所は、その所在都市の管轄区域内において基層裁判所が受理すべきインターネット上のデータに係る紛争、インターネット上の個人情報保護に係る紛争、デジタル資産紛争、ネット上の不正競争紛争、ドメイン名紛争、オンラインショッピング契約に係る紛争、オンラインサービス契約に係る紛争を一元的に管轄する。このことは、インターネット裁判所が専門的裁判であることの優位性を十分に発揮し、国際的に先例となる裁判ルールを確立・改善し、グローバルなインターネットガバナンス体制の改革への深い参画を促し、サイバー空間の運命共同体の構築の加速に貢献するものである。
このほか、「規定」は、インターネット裁判所の指定管轄、合意管轄、上訴手続きなどについても規定しており、関連内容は「2018年規定」とおおむね一致しており、インターネット裁判所の管轄調整が秩序よく連携し、着実に推進されることを保証している。(出所 中国最高裁の公式サイト)