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中国最高裁が第5回の種苗産業における知的財産権司法保護の典型的判例を発表

時間:2025-04-30

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典型的判例の指導的役割を十分に発揮させ、種苗産業における知的財産権保護を強化し、高度な司法によって種苗産業のイノベーションと高品質の発展を推進するため、中国最高裁は3月20日、第5回の種苗産業における知的財産権司法保護典型的判例15件を発表した。

今回発表された典型的判例は民事案件13件、行政案件1件、刑事案件1件を含み、その中には判決で裁判終了した案件もあれば調停案件もあり、植物新品種侵害案件もあれば不正競争案件や契約案件もある。事例に関わる品種には水稲、小麦、トウモロコシ、大豆などの主要な農作物品種のほか、リンゴ、コウシンバラ、バラなどの果物、花の品種が含まれる。

これらの判例は以下の司法の方向性を反映している。

一、厳格な保護を堅持し、イノベーション主体と育種家の合法的権益を確実に保護する。「岡優188」水稲品種権侵害案件において、登録品種の合法的譲受だけでは品種権者の損害賠償請求に当然対抗できないことを認定し、侵害者は依然として損害賠償責任を負うとした。「天山祥雲」コウシンバラ品種権侵害案件において、権利消尽の原則は既に販売された繁殖材料の再繁殖行為に適用できないことを明確にし、権利者の賠償請求額を認めた。「金粳818」水稲品種権侵害案件において、権利侵害行為の発生に組織的・意思決定的な役割を果たした一人会社の実質的支配者と、個人口座で会社の代金を受け取り侵害行為に直接参加したその他の人物に対し、会社との連帯賠償責任を負うよう命じる判決を下した。「油6019」大豆品種権侵害案件において、品種権者の許可なく認可されていない地域で登録品種の繁殖材料を生産・販売する行為は依然として侵害を構成すると認定した。著名育種家の氏名を無断使用した不正競争案件では、商品の外装に著名育種家の署名などを無許可で商用利用し、当該育種家と特別な関係があると誤認させる行為は不正競争を構成すると認定し、育種家の合法的権益を強力に保護した。

二、司法措置の革新を通じて、司法保護の実効性を継続的に向上させる。「岡優188」水稲や「先玉508」トウモロコシなどの品種権侵害案件において、権利侵害被疑種子の数量に関する直接証拠が不足している状況下で、品種権者に有利な計算方式を採用し、中国種苗産業ビッグデータプラットフォームの品種登録数を参考に損害賠償額を確定し、賠償額算定の難題解決に向けた新たな考え方を提供した。「サイレート」リンゴ品種権侵害案件において、収穫物の販売行為を生産・繁殖行為の自然な延長と見なし、収穫物販売の利益を賠償額算定の根拠とし、品種権者に対する十分な保護と全面的な賠償を強化した。また、侵害を停止させる方法として、被侵害品種の接ぎ穂を切断して接ぎ木する方法を採用し、品種権者の利益保護と侵害者の合理的な主張のいずれも考慮して、判決執行の柔軟性と合理性を示した。「紅運来」パイナップルや「京糯6」トウモロコシなどの品種権侵害案件において、親子関係の鑑定基準や分子マーカー検査基準が存在しない特定品種について、立証責任の転換や検査方法の科学性審査などを通じて技術的事実を明らかにし、鑑定基準の欠如による技術的事実認定の難題を実質的に解決した。

三、多元的な解決策を活用し、相互利益、共存共栄の実現に努める。「LEXTEEWS」などのバラの品種権侵害案件や「手でちぎれるパイナップル」栽培契約に係わる紛争案件において、裁判所は「司法は人民のためのもの」という理念と平等保護の原則に基づき、積極的に調停を推進し、当事者間の相互理解と共感を促し、「権利侵害行為」を「合法的使用許諾」に転換させ、「法廷で争う」状態から「共に利益を得る」状態へと導くことで、訴訟の終了と社会の調和を実現した。

四、刑事罰を強化し、種苗産業の安全を守る強固な法的ディフェンスラインを構築する。「荃優822」水稲品種の営業秘密侵害案件において、鄧某進氏ら4人を営業秘密侵害罪に該当すると認定し、それぞれに1年2ヶ月から10ヶ月の有期懲役と20万元から2万元の罰金を言い渡し、種苗業分野における犯罪行為を厳しく取り締まった。

(出所 中国最高裁判所の公式サイト)