北京市高等裁判所の裁判長·寇昉は2023年4月20日に最高裁判所の記者会見で北京の裁判所の知的財産権司法保護状況（2022年）について次のように紹介した。

一、法に基づいて各種の知的財産権紛争案件を適切に審理し、北京のイノベーション、発展に的確で強力な司法サービスを提供した。2022年に北京の裁判所は各種の知的財産権案件74506件の裁判を終了した。過去5年間で案件数は平均7.43%増加した。北京の裁判所の知的財産権案件は多種多様で、新しいタイプの案件が多く、件数は全国の裁判所の中で上位にある。北京の裁判所はコア技術、重点分野、新興産業に対する知的財産権保護を強化し、年間2656件の専利紛争案件の裁判を終了し、分野は次世代情報通信技術、バイオテクノロジー、新エネルギー、新材料などの新興産業をカバーし、中国初の医薬品のパテントリンケージなど、国内外から大いに注目を集める数多くの裁判を法に基づき終了した。インターネットライブ配信、ショートムービー、人工知能などデジタルエコノミー分野の案件を法に基づいて審理し、イノベーションと権利侵害の境界線を的確に把握し、発展と規範のバランスを法に基づいて適切に維持し、経済・技術開発の新分野の行動規範と競争規則を適時に定めた。「住宅情報データ」や「自動車消費者の苦情申立」に係る案件の審理によって、プラットフォーム上の経営者が収集、整理したデータセットが保護対象になるという司法の考え方を確立した。クリエイティブ産業関連の著作権紛争案件36960件の裁判を終了し、バリアフリーの映画の合理的な使用条項に係る著作権紛争案件などの典型的案件を法に基づいて審理し、文化の発展の規範、促進において著作権の司法保護の役割を果たした。中国初の北京冬季オリンピック・パラリンピック競技大会マスコットの肖像権侵害刑事案件の裁判を終了した。市場秩序の規範化、公平な競争の促進、ビジネス環境の改善における知的財産権裁判の重要な役割を果たし、商標や不正競争、独占にかかわる案件27543件の裁判を終了し、法に基づいて商標権侵害、他人の商品へのクチコミの不正利用、悪意の先取り登録などの行為を抑止した。「古北水鎮」商標の悪意の出願、サーチエンジン以外のシーンにおける“ロボット協定”に係る不正競争紛争などの案件を適切に審理し、公平で秩序のある市場を効果的に保護した。

二、知的財産権に対する司法保護を引き続き強化し、知的財産権司法保護の難題を解決した。保護の更なる強化と権利侵害による賠償の更なる引き上げを図り、『北京市高等裁判所の知的財産権民事案件審理における懲罰的賠償の適用に関するガイドライン』と典型的判例を発表し、知的財産権侵害が故意的で、且つ情状が深刻な場合の懲罰的賠償制度の適用を強化し、権利侵害者に重い代償を払わせるとした。法に基づいて賠償額を引き上げたことで、全市の裁判所の技術系案件の平均賠償額は2018年の52万元から286万元に増加した。知的財産権侵害の犯罪行為を厳格に処罰し、知的財産権刑事案件196件の裁判を終了し、知的財産権侵害を処罰し抑止する刑罰の機能を効果的に発揮した。権利者の権利保護コストをさらに削減するため、全市の裁判所は知的財産権の裁判において「多様な紛争解決＋迅速な裁判」メカニズムを踏み込んで推進し、知的財産権行政管理部門、業界団体、調停専門組織との協力を強化し、紛争解決方法を革新し、訴訟前に各種の知的財産権紛争56803件の調停を行った。商標の迅速な審査作業メカニズムを引き続き改良し、商標の拒絶査定不服審判の行政二審案件の平均審理期間を35日に短縮した。北京知的財産権裁判所は迅速裁判モデルを構築し、迅速裁判の案件の平均審理期間を23日に短縮した。当事者の挙証難問題をさらに解決するため、証拠制度を適切に活用し、法に基づいて挙証責任を合理的に明確にし、複数の案件において挙証妨害規則を適用して権利者の賠償請求の全額又は高額を認定し、偽証の提出、虚偽の陳述、証拠の毀損などの行為に対して法に基づいて制裁を加えた。

三、知的財産権分野の改革・革新を引き続き強化し、北京の裁判所知的財産権裁判システムを完備化する。北京知的財産権裁判所、北京インターネット裁判所の構築を強化し、知的財産裁判関連の人材集積地を築く。北京知的財産権裁判所は設立以降、各種案件139116件の裁判を終了し、中国知的財産権裁判の専門的な道を模索するために先駆け的な役割を果たしてきた。北京インターネット裁判所が設立されてからインターネットにおける知的財産権案件122941件の裁判を終了した。知的財産権裁判の情報化、インテリジェント化を全面的に向上させ、北京インターネット裁判所はブロックチェーン技術を活用して「天平链（バランスチェーン）」電子証拠プラットフォームを構築し、著作権など9カテゴリで25のアプリケーションノードのデータドッキングを完成し、チェーンに電子データの証拠2億本を保管し、作品の権利侵害証拠の取得と訴訟での真偽検証を一括完成した。北京の裁判所の知的財産権司法保護体系の完備化を進めており、現在全市の裁判所は重要なエリアに六つの巡回裁判法廷を設置し、三つの国家重点ラボに裁判官ステーションを設立して、北京イノベーションの主要プラットフォームのいずれでも巡回裁判ができるようにしている。

（中国保護知識産権網から翻訳）