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中国最高裁判所知的財産権法廷の年度報告書(2021)

時間:2022-04-01

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中国最高裁判所知的財産権法廷(以下、法廷という)の試行3年間の最終年度である2021年に、法廷が専利など技術分野の知的財産権上訴案件と独占関連の上訴案件を集中的に審理できる優位性を十分に発揮し、主要コア技術、重点分野、新興産業などの分野の知的財産権司法保護を強化し、公平な競争を促す政策の実施を踏み込んで推進し、対外交流・協力を積極的に展開して、専業化した裁判メカニズムの健全化、完備化を続けたことで、国家レベルの知的財産権案件の上訴審理メカニズムは効果が更に際立ち、知的財産権強国の建設と高水準の科学技術による「自立自強」に確かな司法保障を提供した。

1.案件の基礎データ

法廷は2021年に技術分野の知的財産権案件と独占関連案件5238件(新規受理4335件)を受理し、3460件の裁判を終了し、裁判終了対受理比は79.8%になる。最高裁判所案件全体に占める割合は、法廷が受理した案件が17.8%(受理した民事二審案件は全体の68%、行政二審案件は全体の100%を占める)、新規受理案件が16.4%、裁判終了案件が13.5%で、案件の受理数も裁判終了数も各部署の中でトップであった。新規受理案件数は2020年同期より1158件増え、36.4%増で、裁判終了数は673件増え、同24.1%増であった。

2.類別のデータ

新規受理した2569件の民事二審実体案件の内訳は、発明専利権侵害紛争576件、実用新案権侵害806件、専利出願権及び専利権の帰属紛争213件、植物新品種権紛争68件、集積回路配置図設計紛争2件、技術秘密紛争79件、コンピューターソフトウェア紛争593件、技術分野の知的財産権契約紛争153件、独占紛争25件、その他の紛争54件である。発明専利権侵害紛争、コンピューターソフトウェア紛争、専利出願権及び専利権の帰属紛争、技術秘密紛争、植物新品種権紛争など案件の増加率が比較的に高かった。管轄権異議上訴案件はやや減少した。
新規受理した1290件の行政二審実体案件の内訳は、発明専利出願拒絶不服審判紛争457件、実用新案出願拒絶不服審判紛争36件、意匠出願拒絶不服審判紛争3件、発明専利権無効紛争283件、実用新案権無効紛争234件、意匠権無効紛争102件、植物新品種出願拒絶不服審判紛争1件、独占行政紛争2件、行政処罰や行政裁決などその他行政案件172件であった。前年に比べて各種の行政紛争はすべてが大幅に増え、発明専利出願拒絶不服審判紛争と発明専利権無効紛争の増加が最多であった。法廷は始めて植物新品種権利付与・権利確認紛争、独占行政紛争を受理した。

3.判決のデータ

裁判終了した3460件の民事と行政案件の内訳は、原判決維持案件が2272件、維持率が65.7%であった。取下げ案件が509件、取下げ率が14.7%で、調停で和解した案件が198件(民事調停書発行)、調停率が5.7%、全体の調停和解・取下げ率は20.4%であった。差し戻し・破棄自判案件468件、全体に占める割合は13.5%で、うち差し戻しの割合は0.8%で、前年の2.2%より著しく減少した。その他の形で裁判を終了した案件は13件であった。

裁判終了した2023件の民事二審実体案件の内訳は、原判決維持案件が1004件、維持率が49.6%であった。取下げ案件が440件、調停で和解した案件が198件で、全体の調停和解・取下げ率は31.5%であった。差し戻し・破棄自判案件381件、全体に占める割合は18.8%であった。民事管轄案件の破棄自判率は4.8%であった。

裁判終了した971件の行政二審案件の内訳は、原判決維持案件が862件で、維持率が88.8%、取下げ案件が43件で、取下げ率が4.4%、差し戻し・破棄自判案件が64件で、全体に占める割合は6.6%、その他の形で裁判を終了した案件が2件であった。

4.各種の案件の特徴

専利民事案件について。(1)請求項の解釈が依然としてこのタイプの案件の主な問題である。法廷は技術特徴の区分、同等の特徴の判定、機能特徴及び使用環境条件特徴の識別などと請求項の解釈にかかわる問題の裁判基準を更に明確にし、専利権保護の範囲、レベルが従来技術に基づく専利権者の創造的な貢献と相応することを確実に保証した。(2)権利侵害の抗弁は合法性による抗弁と従来技術による抗弁が多数であり、専利権の有効性について抗弁したものもあった。(3)専利権侵害の損害賠償額の計算がより科学的で合理的になった。証拠規則を活用し、最大限の努力をして被害や権利侵害による利得の関連事実を明らかにし、専利権侵害による損害賠償額を科学的かつ合理的に認定するように求めることで、高額賠償案件が増え、権利侵害に対する懲罰を効果的に強化した。(4)専利(出願)権帰属紛争の中で職務発明紛争の割合が最も高かった。係争中の発明と従業員が元の職場で担った職務または与えられた任務との「関連性」をいかに捉えるか、係争中の発明は元の職場の材料や技術を「主に利用」して成しえたものであるかどうかをいかに捉えるかがこのタイプの案件の主要争点である。(5)民事と行政が部分的に重なる専利案件の共同審理メカニズムがさらに完備化された。中国国家知識産権局と共同で、権利侵害プロセスと権利確認プロセスが重なる専利民事案件のコミュニケーション・フィードバックメカニズムを構築し、こうした案件の共同審理を効果的に促した。

専利行政案件について。(1)紛争専利は主に発明専利である。新規に受理した発明専利出願拒絶査定不服審判行政紛争と発明専利権無効行政紛争が740件で、新規に受理した専利権付与・確認案件全体の66.4%を占めた。(2)新しい分野、業態にかかわる発明専利紛争が増えた。医薬(漢方を含む)、通信分野が依然として紛争の集中分野であるほか、インターネット、ビッグデータ、電子商取引、人工知能、ブロックチェーンなどの技術にかかわる発明専利案件が徐々に増えている。(3)案件の争点の多くは創造性と新規性の認定である。

植物新品種権案件について。(1)主要農作物の品種の割合が大きい。トウモロコシ、水稲、小麦、綿花などの植物品種にかかわり、中でもトウモロコシ、小麦の新品種権案件数が比較的多く、いずれも全体の10%以上を占めている。(2)案件の種類と地域が比較的集中している。民事権利侵害紛争が全体の80%を超え、権利付与・権利確認行政紛争案件が初めて法廷プロセスでの解決を求めるようになった。案件の発生地がトップ5の河南省、江蘇省、安徽省、甘粛省、山東省に集中している。(3)権利侵害者が多様化し、侵害行為も様々である。権利侵害者には、種苗会社、農民専業合作社(注:農業協同組合に似た組織)、家族経営の農場、大規模な穀物生産者などが含まれ、権利侵害の手法が一段と隠微になった。(4)育種の成果に対する総合的な保護を重視するようになった。「白ぶなしめじ菌株」発明専利権侵害案件の裁判を終了し、権利者が微生物寄託番号で取得した微生物品種専利権を法により保護した。専利保護は遺伝資源保護の重要な方法の一つになり、イノベーション成果の多角的保護をもとめる育種家の法的需要を反映している。

技術秘密案件について。(1)案件が増え続けており、より広範な技術分野に及び、新しい技術分野の案件が増えた。2019年に受理した技術秘密紛争実体案件は12件、2020年には44件、2021年に79件に増えた。(2)関連する法的問題は複雑で多様的である。手続問題は主に管轄権争いであり、権利侵害の実施地、提訴を繰り返す情況の認定及び違約責任と権利侵害責任が競合する場合の管轄権の認定などが含まれる。実体問題の争いは技術秘密の内容と範囲、技術秘密侵害の賠償額の確定及び秘密保持措置、技術秘密侵害行為、技術秘密の変更や改良における実質的な貢献、カスタマイズ製品の技術情報が技術秘密に当たるかどうかの認定などが含まれる。(3)高額賠償を命じた判例が大幅に増加した。2020年の「カ―ボポール(Carbopol、卡波)」技術秘密侵害案件において法定の懲罰的賠償の最大倍数である5倍を適用し賠償額3000万元超の判決を下したのに続いて、「バニリン(Vanillin、香兰素)」技術秘密侵害案件では賠償額1億5900万元の判決を下した。

コンピューターソフトウェア案件について。(1)主にコンピューターソフトウェア著作権侵害紛争とコンピューターソフトウェア開発紛争の2種類である。(2)コンピューターソフトウェア著作権侵害紛争案件はバッチ処理の権利保護案件が比較的に多い。(3)コンピューターソフトウェアの帰属認定はより多くの課題に直面している。例えば、コンピューターソフトウェアの完成時点については、巡り巡って何度も挙証が行われる情況が生じている。

独占案件について。(1)独占契約紛争民事案件、特に水平的独占契約案件の割合が増えた。水平的独占契約は情報通信技術、自動車運転教習サービス、消防検査サービスなどの業界に関連し、一部の独占契約には業界団体もかかわっている。法廷は複数の案件の判決で独占契約であると認定し、司法が独占禁止を強化する鮮明な姿勢を見せた。(2)独占行政案件の裁判が始まった。2件の行政案件がそれぞれ独占禁止法第46条の適用と行政不作為行為の訴訟時効の確定にかかわり、被告はそれぞれ地方の法執行機関と国務院の独占禁止法執行機構であった。(3)外国関連の独占禁止民事案件が増えた。当事者は国外で実施されたが中国国内市場で競争制限効果が生じた独占行為について訴訟を提起した。(4)独占禁止問題と知的財産権問題が交錯する状況が増えた。このタイプの案件は専利権関連の市場の支配的地位の濫用行為にかかわり、また医薬品専利のリバースペイメント契約、市場分割、販売制限など水平的独占契約案件にもかかわるものであり、ますます困難で複雑化している。(中国最高裁判所から翻訳)