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故意的権利侵害行為に厳格な懲罰を与え、休眠「専利」を呼び覚ます―中国専利法改正の見どころ

時間:2020-12-01

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10月17日、中国第13期全人代常務委員会第22回会議が専利法改正を可決した。この四回目となる専利法改正は、専利権者の合法的権益に対する保護の強化、専利の実施と活用の促進、専利権付与制度の完備化などの面で一連の改正を行っており、社会全体のイノベーションの活力を刺激するために強力な法的保障を与えるものとなるだろう。

権利侵害のコストを増やし、権利侵害者に重い代償を払わせる

知的財産権の保護とはイノベーションの保護である。中国は長年にわたって知的財産権保護を強化してきたものの、その効果は専利権者の期待に未だ及ばず、専利権保護には挙証難、ハイコスト、低賠償額などの問題が存在している。

これに対し、今回の専利法改正では懲罰的な賠償制度が新規に追加された。具体的には、故意的専利権侵害について、情状が深刻な場合、裁判所は権利者の損失、権利侵害者の不当利得又は専利使用料の倍数に基づいて算出した額の1倍以上5倍以下に相当する額を損害賠償額として算定することができる。また同時に、法定賠償額の上限を500万人民元、下限を3万人民元に引き上げている。

専利案件の挙証難問題を解消するため、今回の専利法改正は証拠の規則が更に改善された。権利者は挙証に力を尽くしたが、権利侵害関係の帳簿、資料が主に権利侵害者に握られている場合、裁判所は権利侵害者に提出を命じることができ、これにより権利者の挙証負担を軽減させている。

そのほか、専利権保護の効果と効率をより一層向上させるため、今回の専利法改正では行政保護関連制度が改善され、信義誠実原則が新規に追加された。

転化、活用を促進し、休眠「専利」を呼び覚ます

取引コストを下げ、専利の転化効率を向上させるため、今回の専利法改正では専利開放許諾制度が新規に追加された。開放許諾声明とその発効に必要とされるプロセス要件、開放許諾されるまでのプロセスと実施権者の権利と義務、相応の係争解決ルートが規定されており、これによって政府機関の公共サービスを通じて、専利技術の供給側と需要側の間の情報の非対称性の問題の解決が期待される。

全人代常務委員会の審議意見と各界の声に基づき、今回の専利法改正では、開放許諾実施期間中は専利権者の納付する専利年金を相応に減免することが特に強調されている。専利権者が自発的に開放許諾することを奨励し、専利の実施と活用を促進することを目的としている。

改正後の専利法は、事業単位の法に基づく職務発明の扱いに関する権利や、国が専利権付与された事業単位による財産権報奨関連規定の施行を奨励するなどの規定を新規に追加し、発明の産出とその普及、実用化をより一層奨励している。国務院専利行政部門が専利情報公共サービスシステムの構築に責務を負い、専利の基礎的なデータを提供することを規定し、また地方の専利行政部門が専利公共サービスを強化し、専利の実施と活用を促進することの責務を明確にしている。

医薬品業界のイノベーションを喚起し、国民の生命と健康をよりよく守る

専利法改正では医薬品の専利権存続期間の補償に関する規定が新規に追加されている。中国での販売が承認された新医薬品の関連発明専利について、新医薬品の販売にかかわる承認審査により消失した専利権期間を補償するために、専利権者の請求に応じて補償期間を最大5年、また販売承認日から存続期間最大14年まで延長することができると規定している。

また同時に、医薬品販売前の潜在的係争の早期解決を目的として、専利法改正では医薬品専利をめぐる係争の早期解決メカニズムが新規に追加されている。