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最高裁判所知的財産権案件年度報告(2020)の要旨

時間:2021-05-27

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2020年、中国最高裁判所は年間で各種知的財産権案件5390件を新規に受理した。案件の審理手続別では、二審案件が3171件、提審案件(事件の重大性やその他の原因で上級裁判所が下級裁判所で審理中または審理済みの事件を再審理する案件を指す)が300件、再審請求案件が1878件、伺い案件は23件、不服申立案件が3件、その他が15件であった。案件の対象別では、専利案件が2830件、商標案件が1490件、著作権案件が111件、独占案件が31件、不正競争案件が66件、植物新品種案件が51件、知的財産権契約案件が205件、集積回路レイアウト案件が7件、コンピューターソフトウェア案件が457件、営業秘密案件が75件、その他が67件であった。案件の性質別では、行政案件が1904件で、内訳は専利行政案件が742件、商標行政案件が1119件、その他の行政案件が43件であり、民事案件は3470件、伺いの刑事案件は16件であった。

また、最高裁判所が裁判終了した各種知的財産権案件は5006件で、内訳は二審案件が2785件、提審案件が305件、再審請求案件が1882件、伺いの案件が19件、その他が15件であった。裁判終了した1882件の再審請求案件のうち、棄却が1361件、提審が372件、再審を命じた判決が92件、訴訟の取り下げが56件、訴訟終了判決が1件であった。裁判終了した2785件の二審案件のうち、原審判決を維持した判決が1676件、調停や訴訟の取り下げが700件、破棄差し戻しや変更判決が405件、その他が4件であった。

最高裁判所が2020年に審理した知的財産権案件の特徴は以下のとおりである。案件の新規受理数の大幅な増加が続き、前年比40.2%増となり、中でも専利案件は同比46.6%増、商標案件は同比54.4%増であった。専利と商標にかかわる知的財産権案件の全体に占める割合が依然として大きく、それぞれ52.5%と27.6%である。専利民事案件においては、「訴訟差止命令」が注目され、難題となり、請求項の解釈の基準が更に明確化され、損害賠償の算出方法がさらに詳細になり、厳格な保護がポジティブな効果を収めた。専利行政案件では、進歩性、新規性の判断が主な焦点で、請求項が明細書に支持されているか否か、明細書の開示は十分か否かの判断基準が更に詳細化され、専利権付与・確認のための実質的要件についての司法審査の幅と深さがさらに拡大した。商標民事案件では、商標権の取得、禁止権の行使などの基礎的な法的課題についての研究が掘り下げられ、混合属性を保持する商標の権利侵害認定、刑事と民事が重なった案件の証明基準などの新しいタイプの案件に対する法律適用が積極的に模索された。商標行政案件では、地名を含む商標の登録の可否、事情変更の原則の適用、権利衝突の判断、「その他の不正手段」の認定など法的課題の適用基準がさらに明確化された。著作権案件では、コンピューターソフトウェアの著作権保護、中国の古典文学作品との類似性の判断が難題となった。不正競争案件では、他人の商標を企業商号として登録する不正競争行為の認定が主要な課題となった。植物新品種案件では、品種の同一性の判断時の技術事実認定が難題であり、「自家用栽培」の権利侵害の例外認定基準が更に明確化された。集積回路レイアウト案件では、専用権の保護範囲、独創性の認定などの基礎的な法的問題が明確になった。独占案件では、水平的独占協定の実施者がその他の実施者にいわゆる経済損失の賠償を請求する場合の処理の原則と独占係争の受理要件などが明確化された。管轄権の異議などの手続き案件では、渉外民事案件の管轄権の認定に関する若干の原則と逆の行為の保護のための具体的な適用が明確になった。

この度の報告では、最高裁判所が2020年に裁判終了した55件の典型的知的財産権判例(案件の事実と法的問題が基本的に同一の関連案件は1件として計算された)も発表された。