先頃、中国最高裁判所知的財産権法廷が『最高裁判所知的財産権法廷判決要旨(2025)』を公表した。ここでは専利権帰属・侵害案件の判決要旨の一部を紹介する。
1.「偽の従属項」が存在する場合の請求項の解釈、及び商業標識に基づく製造者認定
【判決要旨】1.専利請求項に記載された形式的な従属請求項が独立請求項を実質的にさらに限定するものでない場合、一般的には当該従属請求項を独立請求項として解釈すべきである。保護範囲を確定するにあたり、当該請求項と形式的に引用されている請求項との区別に注意しなければならず、当該請求項およびその実施例は、形式的に引用されている請求項を解釈するために必ずしも用いられるわけではない。
2.被疑侵害製品に商標などの商業標識が付されているが、製造者に関する情報が明示されておらず、専利権者が当該商業標識の示す主体に侵害の製造者責任を負わせることを主張する場合、被疑侵害者が反証を提出せず、または提出した証拠が製造者であることを否定するに不十分であるとき、裁判所は当該被疑侵害者を製造者と認定することができる。
2.微生物専利に係わる寄託菌株の情報と明細書に記載された情報が異なる場合の保護範囲の確定
【判決要旨】法に従って微生物の寄託手続きが完了した専利に関して、請求項に限定された寄託菌株の試験情報と専利明細書に記載された情報が完全に一致しないとき、専利権者が相違について当業者であれば納得できる合理的説明を行った場合は、寄託菌株の試験情報に基づいて専利権の保護範囲を定めることができる。
3.ソフトウェアとハードウェアをセットで販売した場合の被疑技術案の認定
【判決要旨】製品の製造者が特定のソフトウェアとハードウェア製品をセットで販売する場合、ソフトウェアとハードウェアの組み合わせによる使用は最終的にユーザーによって行われるが、製造者がソフトウェアとハードウェアの組み合わせによる使用が可能であることを知りながら、ソフトウェアとハードウェアをセットで供給した以上、当該ソフトウェアとハードウェアの組み合わせによって形成される技術案は当該製造者が実施した侵害技術案として扱うべきである。
4.景品提供行為の性質の認定
【判決要旨】被疑侵害者が商品取引の過程で、被疑侵害製品を景品として他人に提供した場合、これは専利法上の販売行為に該当する。
5.主要部品の供給が製造行為に該当するか否かの認定
【判決要旨】被疑侵害者が被疑侵害製品の主要部品を製造し、かつその他の必要部品の入手手段も提供したことで、実質的に被疑侵害技術案の形成を主導・決定した場合、専利法上の製造行為を実施したと認定できる。
6.組み合わせて使用される専用部品を供給する行為の認定
【判決要旨】被疑侵害者が、その製造・販売する被疑侵害製品の部品が専利製品の部品と組み合わせて使用されるほかに合理的な用途のない専用部品であることを明らかに知っており、かつ両部品の組み合わせにより形成される技術案が専利権の保護範囲に属する場合、この行為は侵害幇助に該当する。
7.専利製品のラベルを貼り替えて再販する行為の認定、及び専利技術案を実施する専用品の販売と黙示の許諾
【判決要旨】1.被疑侵害者が、専利権者の許諾を得て製造・販売された専利製品を購入した後、直接または簡単に再包装してラベルを貼り替えて再販し、かつ自らが研究開発・製造した製品であると公言した場合、この行為は一般的に専利法上の侵害行為には該当しない。専利権者は別途、法律に基づいて権利を主張することができる。2.ある製品の唯一の合理的な用途が係争専利の技術案を実施することである場合、買受人が専利権者の許諾を得て製造・販売された当該製品を購入し、それを用いて専利技術案を実施する行為は、一般的に専利権者の許諾を得たものと見なされ、専利権の侵害には該当しない。
8.方法専利の侵害認定
【判決要旨】方法専利権侵害紛争案件において、専利権者が被疑侵害技術案で方法専利の特定の技術的効果を得たことしか証明できず、当該方法専利で定められた特定の手順および方法を実施したことを立証できない場合、一般的に被疑侵害技術案が当該方法専利の保護範囲に属するとは認められない。
9.専利権付与・確認において認定された区別される技術的特徴についての専利権侵害案件における均等判断
【判決要旨】発効した専利権付与・確認行政決定または判決において、専利技術案におけるある技術的特徴が当該専利と最も近い先行技術と区別される技術的特徴であると認められ、かつ、先行技術は当該特徴を最も近い先行技術と組み合わせることにより専利技術案を実現するという技術的示唆を提供しておらず、専利権侵害紛争案件において、被疑侵害技術案に、専利技術案の区別される技術的特徴ではなく、最も近い先行技術の技術的特徴が用いられている場合、両者が均等な技術的特徴であると認めるべきではない。
10. 数値限定の技術的特徴の均等認定
【判決要旨】専利明細書において、請求項に記載された数値範囲の特徴と当該専利技術案が達成する技術的効果との間に特定の対応関係があることが明確に定められている場合、当該数値範囲以外の技術案は専利権の保護範囲から除外されることを意味する。したがって、専利権者が民事侵害案件において、当該数値範囲以外の数値特徴が均等な特徴であると主張した場合、裁判所は一般的にこれを支持しない。
11.論理回路に係わる請求項の解釈、電気分野における均等な技術的特徴の認定
【判決要旨】1.論理回路に係わる電気分野の専利請求項については、当業者の視点に立ち、全体的な論理的解釈に従い、請求項に限定された技術案全体に基づいて、各技術的特徴の論理的関係、信号の流れおよび制御のタイミングを重点的に理解すべきであり、技術的特徴をその論理的連鎖から切り離して捉えることがないよう注意すべきである。2.電気分野における均等な技術的特徴の認定にあたり、専利技術案と被疑侵害技術案の関係技術的特徴の具体的な技術手段が基本的に同一であるか、それぞれの技術案全体における具体的な機能が基本的に同一であるか、また、具体的な機能を実現する際の直接的な技術的効果が基本的に同一であるかを重点的に検討すべきである。回路が最終的に実現する抽象的な機能のみに着目し、各モジュールの具体的な構成や直接的な技術的効果を見逃して、専利権の保護範囲を不当に拡大することがないようにすべきである。
12. 標準必須専利権侵害の比較と判断
【判決要旨】標準必須専利権侵害紛争案件において、「ベンチマーキング」は侵害判断の重要な手段の一つである。特に特定の基準を満たす被疑侵害製品が実施する技術案自体は技術的難易度が高く、多額のコストを負担しなければならない場合は尚更である。専利権者が係争中の専利が標準必須専利に該当することを証明した場合、当該標準に適合する被疑侵害製品は当該標準必須専利の保護範囲に属すると推定できる。被疑侵害者が、当該被疑侵害製品が当該標準必須専利の保護範囲に入らないと主張する場合には、自らが標準必須専利を実施していないことを証明する証拠を提出しなければならない。
13. 受託製造の共同製造者の認定および責任分担
【判決要旨】受託製造に係わる専利権侵害紛争案件において、実際に専利技術案の実施を決定する委託者と専利技術案を直接実施する受託者は一般的に共同で製造行為を実施する者であり、共同侵害を構成し、連帯賠償責任を負うべきである。委託者が製品は受託者から供給されたものであることを理由に合法的出所の抗弁を主張した場合、これを認めない。
14. 農薬を登録するための農薬専利実施の性質の認定
【判決要旨】ジェネリック農薬の製造者が、自ら農薬行政主管部門への農薬登録申請に必要な試験データを取得するために、農薬専利権の保護範囲に属する被訴侵害製品を限定的に製造・使用したが、正常な専利権行使に不当な損害を及ぼさず、また専利権者の正当な利益を不当に損なわない場合、専利法上の「試験又は研究の例外」に該当し、専利権侵害とはみなされない。
15.「試験又は研究の例外」の適用、及び専利無効と悪意ある訴訟の関係
【判決要旨】1.専利法第75条第1項第4号によれば、専ら「試験又は研究」の目的での実施は、専利権の侵害には該当しないとされている。この規定の適用にあたっては、行為の目的が「専ら」科学研究および科学試験に限定され、すなわち直接的な経済的利益を伴わない研究活動に限られる。また、行為の主体については、科学研究・試験を行う主体に限定される。2.専利権の効力、特にその進歩性の有無に関する判断は相当な専門性と複雑性を有するものであり、専利権が無効または一部無効とされたからといって、専利権者が提起した侵害訴訟が悪意ある訴訟であると単純に推論してはいけない。
16.先行技術の使用許諾期間満了後は、先使用権を主張する抗弁ができない。
【判決要旨】被疑侵害者は、専利出願日前に技術秘密の実施許諾により当該専利技術案の実施許諾を受けており、また同一製品の製造、同一方法の使用、または必要な関連準備を行っていた。その後、技術秘密の許諾期間が満了してからも、許諾を得ずに引き続き当該専利技術案を実施し、これについて先使用権を主張したが、裁判所はこの抗弁を認めない。
17. 信義誠実の原則に反して専利を標準に組み込む行為を法は保護しない。
【判決要旨】専利権者は信義誠実の原則に従い、善意かつ合理的な方法で専利権を行使しなければならず、専利権を濫用してはならない。専利権者が自らまたは標準策定者を誘導して、自らの専利や専利出願に係わる技術案を国家標準、業界標準、地方標準に組み込むことは、その標準が強制標準であるか推奨標準であるかを問わず、専利権者が標準策定において専利出願および専利権の取得状況を実際のとおりに開示しておらず、標準が公布された後に主観的に過失のない標準の実施者に対して専利権侵害訴訟を提起した場合には、その行為は信義誠実の原則に反し、専利権の濫用に該当するため、法の保護を受けない。
18. 専利権侵害案件における金型の廃棄を求める請求の審査
【判決要旨】専利権者は、侵害製造者が侵害製品の製造に専用される金型を保有または管理している蓋然性が極めて高いことを立証し、あるいは合理的に説明した上で、被疑侵害製造者が反証する十分な証拠を提出しない場合、裁判所は専利権者の金型の廃棄を求める請求を支持する。
19.専利権侵害による損害賠償の算定方法の選択
【判決要旨】専利権侵害紛争案件において、裁判所が侵害製品の販売数量の全部または一部をすでに確定している場合、原則として既に侵害損害賠償額を算定するための基本的な要件が揃ったものとみなされ、侵害による損害または侵害による利益に基づいて損害賠償額を計算すべきである。この場合、たとえ専利権者が主張または同意したとしても、ただちに法定賠償を適用して賠償額を決めることは適切ではない。
20. 繰り返し侵害に対する懲罰的賠償
【判決要旨】先の確定判決において、被疑侵害者の製造・販売行為が当該専利権の侵害に当たると認められ、権利侵害による損害賠償の算定期間は、先の第一審の法廷弁論終結前までとした。侵害者が先の第一審法廷弁論終結後も同一または類似の侵害行為を継続して行った場合、専利権者が別の関連後続案件訴訟を提起し、懲罰的賠償の適用を求めるときは、裁判所はこれを支持することができる。
21. 技術案の修正と繰り返し侵害の認定、及び先の判決による賠償額と繰り返し侵害に対する懲罰的賠償の算定基準の認定
【判決要旨】1.確定判決により、被疑侵害者が専利権を侵害したと認められた後、当該侵害技術案について実質的でない修正だけを行って再び侵害行為を継続した場合、その行為は同一または類似の侵害行為を故意に再度行ったものとみなすことができ、懲罰的賠償制度を適用することができる。2.被疑侵害者が同一または類似の侵害行為を故意に再度行い、専利権者が侵害による利益に基づく損害賠償を主張するものの関連証拠の収集が困難であり、被疑侵害者が正当な理由なく侵害行為に関連する帳簿等の資料の提出を拒否し、専利権者が、被疑侵害者の侵害による利益が確定判決で認定された賠償額を下回らないことが再度侵害したことの合理的原因であることを理由に、前回認定された賠償額を懲罰的賠償の算定基準とするよう主張した場合、裁判所は情状に応じてこれを支持する。
22.名義を変更して専利権侵害を継続した場合の懲罰的賠償制度の適用
【判決要旨】確定判決により、自然人または当該自然人が実質的に管理する会社が専利権を侵害したと認定された後、当該自然人が他の主体の名義で同一または類似の専利権侵害行為を組織して実行し、専利権者が懲罰的賠償制度の適用を請求し、かつ、先の確定判決の賠償額算定方法を参考にして懲罰的賠償の算定基準を定めるよう主張する場合、裁判所は情状に応じてこれを支持する。
23.専利権の効力と帰属紛争の審理との関係
【判決要旨】専利出願権または専利権帰属に関する紛争の本質は、当該発明に関する権益の帰属を明確にすることにある。発明は必ずしも専利によってのみ保護されるものではないため、専利出願権または専利権の帰属に関する紛争案件の審理過程で、専利出願が取り下げまたは拒絶、あるいは専利権が無効または放棄されたとしても、当該発明の権益の帰属の判断に影響を及ぼすものではない。一般的に、裁判所は当該権益の帰属に関する紛争の審理を続けるべきである。
24. 複数の労使関係の中での職務発明の専利権帰属の判断
【判決要旨】従業者が複数の会社と前後して労働契約を結び、その労働期間が一部重複したことで、職務発明の専利権の帰属について争いが生じた場合、会社間で職務発明の専利権の帰属について合意があるときは、その合意に従う。合意がないときは、労働関係を結んだ順番を主に考慮し、各会社の投資額や貢献度、過失の有無等の要素を総合的に考慮して専利権の帰属を定めることができる。
25. 技術の由来を理由とする専利権帰属の主張の処理
【判決要旨】元の会社が、専利技術案はその元従業者が在職中に完成した職務発明に由来するものであることを理由に専利権の帰属を主張するとき、由来とされる技術案が当該専利出願日前に公開され先行技術となっており、かつ、当該専利技術案が元の会社の職務発明に該当せず、または契約上の定めによりその権益が元の会社に帰属するものでない場合、元の会社が単に技術案間の派生関係のみに基づいて専利権の帰属を主張するとしても、これを認めない。
26.専利権帰属の請求権原、及び他人の技術秘密に基づく専利出願を提出した後に正当な理由なく取り下げた場合の損害賠償責任
【判決要旨】1. 専利権帰属紛争案件において、元の会社が従業者の入社前に当該専利技術案を完成していた場合、当該技術案は当該従業者が元の会社在職中に行った職務発明に該当せず、元の会社は営業秘密等の他の請求権原に基づいて専利権の帰属を主張することができる。2. 他人の技術秘密に基づく専利出願を提出し、専利出願の公開後に正当な理由なく専利出願を取り下げた結果、当該技術秘密情報が開示または公知された場合、技術秘密の不正開示に該当する。これにより技術秘密の権利者が当該技術秘密情報について専利出願権または専利権などの権益を取得できなくなった場合、開示者は技術秘密の全価値を技術秘密の権利者に賠償しなければならない。
27.上級管理職が職権を利用して会社の知的財産権を意図的に譲渡した場合の責任の認定
【判決要旨】会社の上級管理職が職権を利用して、会社の知的財産権を著しく不当な低価格で他者に譲渡し、さらにその他者が当該上級管理職と関連のある会社に無償使用を許諾した場合、当該上級管理職およびその関連会社、並びに当該知的財産権を譲受した他者は共同で会社の利益を損なう侵害行為を実施したと認められ、連帯して賠償責任を負うものとする。
28. 発明者が刑事罰を受けても、法に基づく報酬や奨励金の受領に影響を及ぼすものではない。
【判決要旨】職務発明の発明者が、職務発明に関する専利権の不法処分により刑事罰を受けた場合、そのことと発明者として職務発明に対する報奨や報酬を受けるべきか否かは、二つの異なる法律関係に属するものであり、法に従って職務発明による報奨や報酬を受領することに影響を及ぼすものではない。
29.捏造された専利に係わる権利の帰属紛争の処理
【判決要旨】専利権帰属紛争案件において、当該専利出願または専利が偽りのない発明活動に由来するものではなく、捏造・虚偽によって生じたものである場合、それは信義誠実の原則に違反しているため、専利権の取得が認められるべきではない。いかなる者も違法行為によって利益を得てはならないという法的基本原則に基づき、当事者が権利帰属の確認を求める請求を支持すべきではない。
30. 専利書類に記載された発明者を変更する場合の発明者の認定
【判決要旨】専利書類にある発明者に関する当初の記載は、通常、実際の発明者を認定するための初歩的証拠であるが、当初の登録時の専利権者が申請により発明者に関する当初の記載を変更した場合、変更後に記載された発明者のみに基づいて実際の発明者を確定することは適当ではない。当初の登録時の専利権者が、変更後の発明者が実際の発明者であると主張する場合には、当該発明者が研究開発に参加したことなどの関連証拠を提出しなければならない。関連証拠を提出できない場合は、その主張は認められない。
31.明細書の図面に関する著作権の帰属が専利権の帰属に与える影響、及び虚偽訴訟に関連する専利権帰属紛争案件における合理的な費用の処理
【判決要旨】1.特許または実用新案の明細書に添付された図面が他人の著作権を侵害しているかどうかと、当該専利に係る発明の権利帰属とは、二つの異なる性質の法律関係に該当する。たとえ当該専利明細書の図面が他人の著作権を侵害したとしても、これにより発明の権利帰属に影響を及ぼすものではない。2.専利権帰属紛争案件が別件の虚偽訴訟に関わり、被害者が当該虚偽訴訟により生じた合理的な費用は虚偽訴訟による不法な損害であり、虚偽訴訟の責任者がこれを賠償すべきであると主張する場合、裁判所はこれを支持する。
32.先の知的財産権案件の審理状況が悪意ある知的財産権訴訟による損害賠償責任紛争に与える影響
【判決要旨】悪意ある知的財産権訴訟における損害賠償責任紛争は、一般的に原告が主張する悪意ある知的財産権訴訟の裁判終了と判決発効の後に処理する。しかし、悪意ある知的財産権訴訟による損害賠償責任紛争は、性質上侵害行為に基づく訴訟であり、その案件の受理および実体審理は、必ずしも先の知的財産権案件の裁判終了と判決発行を前提とするものではない。記録上の証拠に基づき、先の知的財産権案件が悪意ある訴訟に該当しないと判断できる場合には、直ちに判決を下すことができ、先の知的財産権案件の裁判終了と判決発効を待つ必要はない。
33.専利権譲渡後に元の専利権者が無効審判を申し立てる行為の性質の認定
【判決要旨】元の専利権者が自らの専利権を譲渡した後、当該元専利権者、発明者またはその利害関係者が正当な理由なく当該専利権について無効審判を申し立てる行為は、信義誠実の原則に違反する。
34.訴権放棄の承諾と案件の受理、及び単純な法定賠償の適用の回避
【判決要旨】1.訴権は民事主体が司法手続を通じて救済を求める基本的な権利である。当事者が契約で訴権の放棄に合意したにもかかわらず訴訟を提起した場合、裁判所は依然として法に基づき受理しなければならない。2.専利権侵害紛争案件において侵害による損害賠償額を算定するにあたり、できる限り単純な法定賠償の適用を避けるべきである。たとえ権利者が法定賠償の適用を請求したとしても、裁判所はできる限り損害に関する事実を明確にし、侵害による損害額、侵害による利益あるいはライセンス料を参考にして賠償額を算定すべきである。
35. 財産保全と称しながら実際には他者の行為を阻止することを目的とする保全は、行為保全に該当する
【判決要旨】申立人が財産保全を名目として保全申立を行ったものの、その本質が裁判所の保全措置を通じて被申立人に一定の行為を命じたり、一定の行為を禁止することにある場合は、行為保全の申立として審査・処理すべきである。
36. 新製品ではない場合の製法専利権侵害の立証責任の転換
【判決要旨】方法専利権侵害紛争案件において、専利方法を使用して製造された製品は、専利法上の新製品に該当しないが、被疑侵害製品と専利方法を使用して製造された製品は同一の製品であり、かつ専利権者が被疑侵害者の専利方法の使用を合理的に立証する義務を果たしており、当事者間の過去の取引関係や業界との関連性、被疑侵害者の専利方法に関する知識、および専利権者の製品の機能、商標標識または市場評価に便乗した行為などの具体的な情状を総合的に考慮すると、被疑侵害者が専利方法を実施した可能性が高いと暫定的に認めることができる。こうした状況において、被疑侵害者が専利方法を実施していないと主張する場合、自らの製品の製造方法が専利方法とは異なることを証明する反証を提出しなければならない。
37.専利権の保護期間満了後に取得された証拠品は、侵害比較の証拠として採用できるか
【判決要旨】専利権者が、専利保護期間中および保護期間満了後も被疑侵害製品の技術案に変更がないことを証明できる場合、保護期間満了後に取得された証拠を侵害技術の比較対象とすることが認められる。
38. 専利権非侵害確認の訴訟における権利者の否認
【判決要旨】専利権非侵害確認紛争案件において、被告となる専利権者が、原告および案件に係わる製品がいずれも自らの侵害警告の対象ではないと主張し、技術的対比を放棄した場合、裁判所は直接、原告が当該専利権を侵害していないことを確認することができる。
39.製品製造者、川上の販売者は専利権侵害に関する行政裁定に利害関係を有するか否かの認定
【判決要旨】専利権侵害に関する行政裁定により、販売者が販売した製品が専利権侵害製品であると認定され、当該製品の製造者および川上の販売者が、自らが当該行政裁定と利害関係を有するとして行政訴訟を提起した場合、裁判所はこれを受理すべきである。
(出所 中国最高裁の公式サイト)