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中国最高裁判所が種子産業の知的財産権司法保護に係わる典型的判例を発表

時間:2026-04-29

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先頃、中国最高裁判所は全国の裁判所が2025年に裁判が終了した案件から、種子産業における知的財産権司法保護に係わる典型的判例10件を選定し、第六弾として発表した。

今回発表された典型的判例は以下の特徴を有する。第一に、案件は民事・行政案件が主で、内訳は民事侵害案件が9件、植物新品種行政処罰案件が1件である。民事案件には、「偽装」による侵害、「識別表示のない包装」による侵害、貯蔵による侵害、輸入による侵害など、多様な侵害行為が含まれる。第二に、地域が広範に及ぶ。これらの案件の一審判決は、全国9つの省・自治区の9つの裁判所によるものである。第三に、対象となる品種がさらに多様化している。判例に関わる品種は、イネ、コムギ、トウモロコシ、ダイズなどの主要作物品種だけでなく、トマト、リンゴ、ザクロなどの野菜・果物の品種にも及ぶ。これらの判例は、過去1年間の裁判所の種子産業における知的財産権司法保護の実務経験の充実と持続的な発展を反映しており、以下の司法の方向性を示している。

第一に、保護を強化し、育成者権者の合法的権益を適切に保護する。裁判所は厳格な保護、全面的な保護を堅持し、侵害賠償を強化し、法に基づき懲罰的賠償を適用して、侵害の代償と違法行為のコストを大幅に引き上げる。今回発表された10件のうち4件に懲罰的賠償が適用された。「NP01154」トウモロコシ品種侵害案件では、侵害品種の数の多さ、侵害期間の長さ、侵害地域の広さに基づき、懲罰的に賠償額を2倍に引き上げ、5334万7000元を超える経済損失の賠償を命じた。これは中国の植物新品種侵害賠償額の新記録である。「農麦88」コムギ品種侵害案件では、侵害者が識別表示のない包装で侵害種子を販売し、侵害期間が長く、販売量が多かったことに基づき、懲罰的に賠償額を3倍に引き上げ、157万5000元の賠償を命じた。「吉宏6」イネ品種侵害案件では、侵害者がブランドを偽装して育成者権を侵害したことに基づき、懲罰的に賠償額を2倍に引き上げ、50万6000元の賠償を命じた。「斉黄34」ダイズ品種侵害案件では、侵害者が識別表示のない出所不明の「白い包装」を使って種子を販売し、貯蔵規模が比較的大きかったことに基づき、懲罰的に賠償額を2倍に引き上げ、41万2000元を命じた。これらの判例は、懲罰的賠償制度の適用をさらに拡充・発展させるものであり、植物新品種案件における保護強化という裁判所の明確な司法方針を十分に示している。

第二に、保護措置を革新し、種子産業紛争案件の裁判規則を継続的に改善する。裁判所は種子法、植物新品種保護条例などの法律や法規を徹底して施行し、案件の新たな状況・新たな問題に直面して、新しい保護措置を講じ、裁判規則を継続的に詳細化し、種子産業における知的財産権の司法保護制度を改善している。「NP01154」トウモロコシ品種侵害案件では、分子標識法を用いて品種の同一性を認定する際の測定ポイントの追加の要件を明確にし、侵害停止の具体的要件を詳細化し、金銭以外の支払い義務の履行遅延損害額の算定基準を明確することで、判決の適時かつ全面的な履行を確保した。「農麦88」コムギ品種侵害案件では、「貯蔵」行為の構成要件を明確にし、侵害行為を実施した異なる主体に対して、過失の違いに応じてそれぞれ懲罰的賠償責任と補償的賠償責任を負わせた。「斉黄34」ダイズ品種侵害案件では、侵害種子の単価から穀物商品の単価を差し引き、その差額を適切に引き上げて侵害による営業利益を推算することを明確にした。

「WG646」トウモロコシ品種侵害案件では、育成者権者が、被疑侵害品種が登録品種と特徴・特性が同一である証拠を有する場合、侵害者が被疑侵害品種は別の登録品種であるという理由のみで侵害に当たらないと主張しても、原則としてこれを支持しないことを明確にした。「天使紅」ザクロ品種侵害案件では、無性生殖で繁殖した侵害苗の不活化基準と具体的な方法を詳細化し、侵害苗の再拡散を根本から防止した。「WH818」トウモロコシ品種侵害案件では、権利者が親子関係の初歩的立証を完了した後、被疑侵害者が登録品種を使用していないことを証明する証拠を提出しなければ、立証できないことによる不利益を被ることを明確にした。「R900」イネ品種行政処罰案件では、民事上の和解によって公共の利益に基づく行政処罰を免れることができないと明確にし、種子産業の侵害案件における公共の利益の判断基準を詳細化し、行政法執行と司法基準の統一を促した。

第三に、保護範囲を拡大し、立体的で全面的な保護を強力に促進する。裁判所は「真のイノベーション」に対して「真の保護」を与えることを堅持し、育種家と育成者権者の知的成果をあらゆる側面から全面的に保護している。一方で、育成者権の司法保護はより広範囲に及ぶものとなっている。「吉佳」トマト品種侵害案件では、侵害者の輸入行為が対象品種の登録日より前であっても、侵害者の販売行為が対象品種の登録日の後であれば、その販売行為は依然として侵害にあたることを明確にした。「普瑞A280」リンゴ品種侵害案件では、申請日の前に登録品種の繁殖材料を違法に取得し、栽培・繁殖させたとしても、それをもって育成者権に対抗できる先行権利は生じないことを明確にした。他方で、司法保護対象となる品種はますます多様化している。近年、裁判所が審理した種子産業紛争案件は、食糧安全保障に関わるコムギ、イネ、トウモロコシ、ダイズなどの主要作物品種だけでなく、人々のより良い暮らしに関わるリンゴ、ブドウ、ザクロ、トマト、コチョウランなどの野菜・果物・花の品種にも及んでいる。裁判所の種子産業知的財産司法判断は、種子産業の革新・発展を促進すると同時に、人々のより良い暮らしへの願望を実現するための力強い動きとなっている。

(出所 中国最高裁判所の公式サイト)