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広東の裁判所が全国の約3分の1の知的財産権案件の裁判を終了

時間:2022-07-04

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5月31日、中国広東省第13期人大常務委員会第43回会議が同省の裁判所の知的財産権裁判作業状況に関する報告を審議した。

報告によると、2018年から今年4月まで広東省の裁判所は各種知的財産権案件69万8000件を受理し、66万9000件の裁判を終了した。この数字は全国の約3分の1を占めている。内訳は、知的財産権民事案件66万件、刑事案件9386件、行政案件235件である。

重点産業のコア技術分野に注目

報告によると、広州知的財産権裁判所が審理した天源社と国芯社の集積回路配置図設計紛争案件は、権利侵害の事実について先に判決が下り、即時に権利侵害行為が阻止され、チップ設計分野の競争秩序が保護されたことで、司法が科学技術革新分野をサポートした典型的判例となった。

近年、広東省は重点産業のコア技術分野の司法保護を強化し続けている。広東省は全省の裁判所で専利などの技術にかかわる知的財産権紛争案件3万7000件の裁判を終了した。「粤禾丝苗」(水稲の品種)の植物新品種案件など一連の先端技術関連案件の裁判を終了し、科学技術イノベーションを奨励、保障し、技術と産業のアップグレードを促進している。その他、先端技術、有名ブランド、文化の革新などの分野の司法保護を強化するため、同省裁判所は『知的財産権に対する司法保護の確実な強化に関する意見』を公布した。

広東省の裁判所は53万7000件の著作権紛争案件の裁判を終了し、著作者の権益を法により保護しただけでなく、伝播者と公共の利益も同時に考慮した。全省の裁判所で5万9000件の商標権紛争案件の裁判を終了した。「レゴ」、「海天」(調味料の銘柄)、「マカオ钜記」(お土産専門店)など国内外で有名な商標にかかわる紛争案件の裁判を終了し、商標のフリーライド、模倣などの権利侵害行為を厳しく取り締まった。5132件の不正競争と独占紛争案件の裁判を終了し、「Data-sprite」依存ソフトウェア紛争案件、「720ブラウザ」広告遮蔽紛争案件、OPPO社がシズベルグループを訴えた独占紛争案件などのインターネット、不正競争防止、独占禁止にかかわる案件の裁判を終了し、科学技術イノベーション、情報セキュリティ、文化活動やサービスの消費、生活の保障などの分野の公平な競争の保護を強化した。

「開拓」で新興分野の新しい課題に対応

報告によると、新興分野と渉外知的財産権紛争の裁判で、広東省はいつかの進路を新規に開拓した。

権利者が「裁判に勝ったが市場を失う」事態を回避するため、DJI雲台カメラ紛争案件の裁判で、深セン中等裁判所は「先行判決+仮差止命令」を適用し、専利紛争解決の効率を向上させ、専利権侵害による損害の拡大を防止した。

また、広東省は全国で初めてのオンラインゲーム分野の裁判指南を制定し、「夢幻西遊(Fantasy Westward Journey)」ゲームのライブ配信権侵害及び独占紛争案件、「Dreamwriter」人工知能の作成著作物紛争案件、「羅盒」オープンソースソフトウェア権侵害紛争案件など全国初の案件の裁判を終了した。深セン中等裁判所は全国に先立って「デジタル経済の知的財産権司法保護の実施の強化に関する意見」を制定し、30項目の司法措置を講じて、深セン市が世界的なデジタルのフロンティアになるのをサポートするとしている。

また、同省裁判所は標準必須特許紛争の法律問題の研究を深め、当該分野で全国初の作業指南を公布し、当該分野初の司法研究専門書を編纂した。ファーウェイ社とサムソン社の紛争を調停で解決し、国内外ハイテク企業のグローバル紛争の一括解決を促した。全省の裁判所は4869件の渉外知的財産権紛争案件の裁判を終了し、国内外の権利者の合法的権益を平等に保護した。

近年、広東省は権利侵害の取締りに力を入れている。2021年の全省の専利紛争案件の平均賠償額は82万5000元で、2018年より148.5%増え、この四年間で賠償額が1000万元を超えた案件は112件で、賠償額も「アップグレード」している。

現代化した知的財産権裁判システムをイノベートする

報告によると、広東省は専門化した裁判システムを引き続き改善し、知的財産権の裁判所と法廷、インターネット裁判所の建設を強化し、知的財産権案件の管轄の配置を最適化して、全省21市の下級裁判所のいずれもが知的財産権紛争案件を管轄できるようになった。また同時に、「地域をまたがる知的財産権リモート訴訟プラットフォーム」を構築し、知的財産権民事、行政、刑事裁判の「三位一体」改革を進化させ、動画再生ソフト快播QVODに「2億6000万元の高額罰金」を科した行政紛争案件、「穏健」医療の防疫マスクにかかわる刑事及び民事公益訴訟などの典型的案件の裁判を終了した。

特に、専門化した技術調査の健全化を図るため、広東省は「技術調査官+司法鑑定+コンサルティング+専門家の補助」の技術事実究明メカニズムを確立し、技術系案件の審理の質の向上を推し進めた。2度の全国技術調査官制度セミナーを開催し、率先して技術調査作業ガイドを制定し、技術調査典型的案件を発表し、技術調査ラボを設置した。

統計によると、広州知的財産権裁判所は広東知的財産権紛争調停センターの設立を促し、弁護士が裁判所に駐在して調停を行うことを試行し、昨年は調停に成功した紛争は2000件近くで、2018年の27.2倍であった。

報告はさらに、省裁判所が表に立って省市場監督管理局など11部門と共同で覚書を締結し、知的財産権の司法と行政の協調による保護を強化したことにも触れている。広州知的財産権裁判所は国家知識産権局とともに専利無効案件の優先審査メカニズムを確立し、同じ場所で専利の権利確認と権利侵害案件を審理し、迅速に淀みなく紛争を解決した。(中国保護知識産権サイトから翻訳)