2022年5月25日、中国最高裁判所は『最高裁判所のブロックチェーンの司法活用の強化に関する意見』(以下、『意見』という)を公布した。
近年、中国の裁判所はブロックチーン技術の司法分野での活用を強力に推進し、裁判所の司法ブロックチェーンプラットフォームを設立している。司法ブロックチェーンによる証拠保存は22億条以上であり、証拠の保存、インテリジェントアシスト、ファイル保管などでの効果や標準化が継続的に改善され、電子証拠、電子送付の検証保存、改ざん防止などでも効果が現れている。
ブロックチェーンの司法分野での活用をさらに強化し、司法の信頼性の向上、社会ガバナンスのサポート、リスクの防止と解消、高品質の発展の推進などの面でブロックチェーンの作用を十分に発揮させるため、最高裁判所は十分に調査、研究し、幅広く意見を求め、多方面から論証した上で、『意見』を制定し、公布した。『意見』は七つの部分、32条からなり、裁判所のブロックチェーンの司法活用の強化に関する全面的な要求とブロックチェーンプラットフォームの構築に関する要求を明確にしており、司法の信頼性の向上、司法の効率性の向上、司法の調整能力の向上、経済社会のガバナンスのサポートなど四つの代表的な場面でのブロックチェーン技術活用の方向性を提示し、ブロックチェーン活用の保障措置を明らかにしている。『意見』の顕著な特徴は主に以下の通りである。
一、相互運用性(インターオペラビリティ)のある司法ブロックチェーン・アライアンスを構築すること。『意見』は、2025年までに裁判所は各業界と相互運用性のあるブロックチェーン・アライアンスを結び、データの照合、信頼できる操作、スマートコントラクト、クロスチェーンの協調などの基本的なサポート能力を大幅に向上させ、司法ブロックチェーン・アライアンスが経済社会の運行体系と融合し、ビジネス環境の最適化、経済社会的なガバナンス、リスクの防止・解消及び産業のイノベーションと発展を積極的にサポートし、安全な中国、法治の中国、デジタルの中国、誠実な中国の建設をサポートして、中国の特徴を持ち、世界をリードするブロックチェーンの司法分野での活用モデルを構築することを提示している。
二、裁判所のブロックチェーンプラットフォーム構築の要求を明確にしていること。『意見』は、ブロックチェーン活用のトップレベルデザイン(トップダウン方式で制定)を強化し、クロスチェーンの協調活用能力の構築を引き続き推進し、司法ブロックチェーンの技術力を向上させ、インターネット司法ブロックチェーン検証プラットフォームを構築して、標準化した規範的システムを構築し、健全化することを裁判所に要求している。また、オープンシェアな全国裁判所司法ブロックチェーンプラットフォームを構築し、司法ブロックチェーンプラットフォームと各業界のブロックチェーンプラットフォームのクロスチェーン・アライアンスを強化し、協調能力を引き続き向上させ、さらにインターネット上で司法ブロックチェーン検証プラットフォームを構築して、当事者などの関係者による調停データ、電子証拠、訴訟ファイルなどの司法資料の真偽確認をサポートすることを提示している。
三、ブロックチェーンのデータ改ざん防止技術を利用して司法の信頼性を向上させること。『意見』は、裁判所のデジタル包袋、デジタルファイル、司法統計表などの司法データのオンチェーンデータストレージを推進し、執行案件などのデータと取り扱いのオンチェーンストレージを促し、裁判所が送付した訴訟書類とその受領証の司法ブロックチェーンプラットフォームでの統一保存を推進し、司法データの安全、取り扱いのコンプライアンスを保障することを提示している。また、ブロックチェーンプラットフォームの証拠検証機能を完備化、改善し、当事者や裁判官によるブロックチェーンで保存された電子証拠のオンライン検証を支持し、ブロックチェーンを介する証拠保存の基準と規則の完備化を推進し、電子証拠認定の効率と質を向上させると明確にしている。
四、ブロックチェーンを活用して業務プロセスを最適化させ、司法効率を向上させること。『意見』は、案件情報のフロー、調停と裁判プロセスの連係、裁判と執行プロセスの連係・連動、執行の効率向上、執行官の案件処理の利便化など5つの代表的な場面での活用を支持し、業務プロセスの自動化レベルを上げ、司法効率を向上させるとしている。また、調停合意が履行されないと自動的に裁判案件や執行案件となるような業務規則やインテリジェント契約等のプロセスを確立し、調停プロセスでの司法の権威を強化して、多元的な紛争解決を支持することを提示している。
五、ブロックチェーンの共有と連携を活用して司法の協調を促進すること。『意見』は、裁判所と司法行政部門がクロスチェーンの協調で、訴訟に参加した弁護士の資格や信用報告書のオンラインでの照会確認を実現し、確認のリアルタイム性を向上させるとし、また裁判所と検察、警察、司法行政などの部門とのクロスチェーンの協調で、案件のオンラインフローの効率とデータの相互信頼を向上させ、裁判所と行政法執行、不動産登記、金融・証券・保険会社、連合信用懲罰などの部門とのクロスチェーンの協調、執行への調査・確保の自動化、信用懲戒モデルを確立し、共同執行の効率を向上させることを提示している。
六、ブロックチェーン・アライアンスの相互信頼で経済社会的なガバナンスをサポートすること。『意見』は、知的財産権、市場監督管理、財産権登記、取引プラットフォーム、データの所有権の帰属、データ取引、金融機構、関係政府部門などのブロックチェーンプラットフォームのクロスチェーンの協調メカニズムの構築を推進し、知的財産権保護、ビジネス環境の最適化、データの開発・利用、金融情報のフローと活用、企業の破産・再編、信用システムの構築などを支持することを提示している。(中国最高裁ウェブサイトから翻訳)