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中国裁判所の知的財産権案件の法律適用に関する年次報告(2025)(専利・商標案件の要旨)

時間:2026-05-28

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先頃、中国最高裁判所は中国裁判所の知的財産権案件の法律適用に関する年次報告(2025)要旨を発表し、全国の裁判所で2025年に裁判終了した知的財産権案件の中から45の法律適用の通則を整理した。専利と商標案件関連の21の判決要旨を以下のとおり紹介する。

一、専利案件

(一)専利民事案件

1.請求の範囲から除外された特定の技術案は専利権保護範囲に含まれない。
【判決要旨】当業者が請求の範囲および明細書を閲読した上で、特定の技術案について専利権者が背景技術において特に強調し、意図的に除外したものであると判断した場合、均等侵害原則の適用により、その技術案を専利権保護範囲に入れるべきではない。

2.農薬登録申請における農薬専利の実施の性質認定
【判決要旨】ジェネリック農薬メーカーが農薬行政主管部門へ農薬登録申請のために必要な試験データを取得する目的で、専利保護範囲に入る被疑侵害製品を限定的に製造し、使用する行為は、専利権の通常行使に不当な損害を与えず、専利権者の正当な利益を不当に損なわない場合、専利法上の科学研究の例外(Bolar免責)に該当し、専利権侵害とみなされない。

3.信義誠実の原則に違反して専利を標準に組み入れる行為は法律で保護されない
【判決要旨】専利権者は信義誠実の原則に従い、誠実かつ合理的な方法で専利権を行使すべきであり、専利権を濫用してはならない。専利権者が自らまたは標準策定者を導いて、その所有する専利または専利出願の技術案を、強制標準か推奨標準かを問わず、国家標準、業界標準、地方標準に組み入れ、仮に専利権者が標準策定の過程において専利出願および権利付与の情報を正直に開示せず、標準発表後に主観的に過失のない標準実施者に対して専利権侵害訴訟を提起した場合、信義誠実原則に違反し、専利権の濫用に該当し、法律による保護を受けることはできない。

4.悪意の知的財産権訴訟による損害賠償の認定
【判決要旨】悪意の知的財産権訴訟による損害賠償責任は一般の不法行為責任に属し、その損害賠償範囲は全面賠償原則に従い、損害結果と不法行為との因果関係を考慮して確定すべきである。悪意の訴訟の原告が財産保全を申請して被害者の資金を凍結した場合、資金占用により生じた損失は損害賠償の範囲として認められ、保全期間中の全国銀行間同業者貸付センターの同期のローン市場金利(LPR)と同期の普通預金金利の差額に基づき計算することができる。被害者が悪意の訴訟を起こされたことで、法的リスクを回避するためにビジネスチャンスを自ら放棄し、これにより生じた合理的な逸失利益は損害賠償の範囲として認められる。悪意の訴訟に対応するための合理的な支出も悪意の訴訟による被告の損害とされ、損害賠償の範囲として認められる。

5.専利権侵害訴訟における侵害幇助行為の認定
【判決要旨】専利侵害訴訟における侵害幇助行為の構成要件について、「専利を実施するための専用の製品」の「専用」とは、客観的に専利を実施するためにのみ使用でき、実質的な非侵害用途がないことを指す。「他人が侵害行為を実施した」の「他人」には最終消費者も含まれる。

6.現場検証条件が整わない場合の被疑侵害製品についての立証責任の確定
【判決要旨】客観的に現場検証条件が整わない場合の被疑侵害製品について、専利権者が既に初步的証拠を提出して当該製品が専利権保護範囲内に入る蓋然性が非常に高いことを証明した場合、立証責任は通常被訴侵害者に移る。被訴侵害者が反証する証拠を提出できない場合、相当の不利な結果を受けるべきである。

(二)専利行政案件

7.技術手段の重ね合わせ・再構成式技術案の進歩性判断、一部の専利権共有者の出廷拒否への対応、有効な域外送達の認定
【判決要旨】1.モノのインターネット通信技術案の進歩性判断において、係争技術案が既存の技術手段を配列・組み合わせによって単に重ね合わせ・再構成し、ネットワークの従来の設定方式および信号の送受信、読み取り、処理などの従来の手段により、ハードウェア機器に単独または統合された従来の通信機能を付与し、より広い通信範囲またはより多くの通信機能を実現するが、新しい技術手段の導入や新しい技術的問題の解決をおこなっておらず、既存技術および係争専利が果たす作用と実質的な差異がなく、全体としても予期せぬ技術的効果が生じていない場合、進歩性を有すると認めるべきではない。2.専利付与・確認に係わる行政案件において、裁判所が法により送達措置を取った後、一部の専利権共有者が裁判の日時と場所などを知りまたは知るべきであるにもかかわらず、正当な理由なく出廷を拒否した場合、案件の継続審理に影響を及ばさない。3.裁判所が涉外案件の審理において、所在不明の域外の当事者に送達を行う場合、「合理的な最大限の努力」と「手続の乱用防止」の原則のバランスをとり、涉外裁判の全体的な効率化に重点を置くべきである。『ハーグ送達条約』および民事訴訟法の涉外案件に関する送達規定により、郵送、電子、留置、公示および権利共有者、共同協調行為者などによる転送等の国内外送達手段を講じ、あらゆる合理的努力を払うべきである。公示送達を除き、他の個々の送達方式間には強制的な順序は存在しない。当事者が自ら提供した域外郵送先または明確に許可した電子メールアドレスへの送達で、送達先の国がそのような送達に異議を唱えない場合、有効な送達となる。

8.遺伝子組み換えに係わる専利の開示の十分性の判断
【判決要旨】発明が微生物の遺伝子組み換え分野において遺伝子の過剰発現により得られた遺伝子組み換え菌株に係わり、その合成産物が既存の菌株または工程と明確な関連性を有し、かつ明細書に記載された保存菌株、従来技術に公開された遺伝子配列の導入、機能検証等により技術案の実施可能性を証明できる場合、通常、明細書は充分に開示されていると認定できる。

9. 職権による国内優先権の認定
【判決要旨】専利の無効審判において、同専利がみなし取り下げとされ、且つ公開されていない最初の出願を基礎として国内優先権を主張する場合、無効審判請求人が提出した対比文献が従来技術または抵触出願になるかどうかは、同専利の国内優先権が認められるかどうかを前提とする。この場合、国務院専利行政部門は職権をもって国内優先権証明書をもって国内優先権の有無を確認することができる。ただし、当事者に反対尋問および意見陳述のチャンスを与えなければならない。

10.技術偏見克服の認定
【判決要旨】特定の技術手段が当業者によくある誤った技術認識により排除され、専利技術案が正しい技術認識に基づき当該技術手段を採用した場合、専利は技術偏見を克服したことにより進歩性を有する可能性がある。しかし、当業者がその技術手段を排除するのは経済効果の考慮によるものであり、技術認識のバイアスによるものではない場合、専利技術案がその技術手段を採用することは技術偏見の克服ではなく、進歩性があるとは認められない。

二、商標案件

(一)商標民事案件

11.団体標準・企業標準の関連専門用語の正当な使用は侵害に当たらない
【判決要旨】団体標準・企業標準の関連専門用語を製品の原材料、製造工程等の特徴を説明するために使用し、そこに含まれる登録商標の標識を目立たせて使用せず、関係公衆が通常の理解と認識に基づき、当該標識を他人の登録商標と混同しない場合、当該専門用語の正当な使用に属し、侵害に当たらない。

12.双方当事者がともに登録商標を合法的に保有している場合の商標権侵害認定基準
【判決要旨】双方当事者がともに登録商標を合法的に保有している場合、商標権侵害になるかどうかは、双方の商標登録および使用の実情を総合的に考慮し、先行権利を尊重・保護し、関係公衆に混同・誤認されやすいかどうかを最重要の判断基準とし、法により認定しなければならない。関連公衆が両商標を使用する商品の出所を区別できる場合、商標権侵害にならないと認定すべきである。

13.中古品の改造・再生での商標権侵害行為の認定
【判決要旨】被訴侵害者が中古品の形状、配色および全体の外観を実質的に変更したものの、許可を得ずに元の商標標識を引き続き商品に使用し、商品の出所を識別する商標の基本的機能を損なうことで、関連公衆が商品の出所を混同・誤認する可能性がある場合、被訴侵害者の権利消尽の抗弁の主張は認められない。

14.地名を含む登録商標の正当使用の認定
【判決要旨】登録商標に含まれる地名について、登録商標専用権者は他人が正当に使用することを禁止する権利を有しない。地名の使用が正当であるかどうかは、被疑侵害標識の使用状況、関係使用主体の使用方法は誠意があり合理的であるか否か、登録商標に便乗する主観的悪意があるか否か、および関係公衆が混同・誤認するおそれがあるか否か等の要素を総合的に考慮して認定する。
(二)商標行政案件

15.図形商標の特別顕著性の判断
【判決要旨】1.図形商標が特別顕著性を具備するかどうかの判断は、商標出願時に、当該図形が関連公衆に商標として認識され、商品の出所表示機能を果たすことができるかどうかを基準とする。図形商標の実際の使用の有無および具体的な使用方法は、商標の特別顕著性の認定と必然的な関係はない。2.図形商標の特別顕著性の判断は、当該商標の出願時の事実関係の状態を基準とし、通常は出願日以後の事実関係の変化は考慮に入れない。ただし、当該図形商標が登録時に既に一般図形化している場合を除く。

16.産地の範囲が重複する場合の後発地理的表示証明商標の有効性判断
【判決要旨】後発地理的表示証明商標と先行地理的表示証明商標に表示された二つの商品産地の範囲が包含関係にあることは、必ずしも中国商標法第十六条の規定に違反するものではない。後発申請人が提出した産地の範囲、品質管理等の申請書類が地理的表示証明商標の関連要件を満たし、表示商品が明確な使用管理規則を有し、関係品質基準に達し、かつ先行地理的表示証明商標の表示商品と区別できる場合、後発申請は商標法第十六条第二項の規定に違反しないと認定すべきである。

17.「一人で複数商標を保有する」場合における商標の実際の使用の認定
【判決要旨】商標権者が係争商標を含む複数の登録商標を保有し、それらの構成要素が類似する場合、指定使用商品において実際に使用された商標の標識が係争商標の顕著な特徴を変更していない限り、係争商標の実際の使用とみなされる。

18.取消審判における商標標識の規範的な使用の認定
【判決要旨】商標権者は規範的に登録商標を使用すべきである。商標権者が実際の使用においてフリーライド行為を行い、係争商標の実際の使用態様と登録商標とに差異が生じ、他人の商標標識とより近似し、関連公衆に商品の出所を混同・誤認させるおそれがある場合、商標権者は係争商標の顕著な特徴を変えたと判断し、係争商標の規範的な使用ではないと認定すべきである。

19. 下位概念の商品の実際使用が上位概念の商品の使用に該当するかどうかの認定
【判決要旨】指定された使用商品が抽象的な上位概念の商品であり、実際の使用商品が具体的な下位概念の商品であり、両者は同一または類似商品に属し、機能および用途が実質的に同一である場合、係争商標は指定された上位概念の商品において実際に使用されたと認定することができる。指定された使用商品と実際の使用商品が上位・下位概念の商品にあたるかどうかは、関連公衆の一般的な認識および取引実態に基づき審査、判断することができる。

20.商標の使用証拠の全体的審査、判断
【判決要旨】商標権取消審判行政訴訟案件において、係争商標の使用証拠の全体像を捉えるべきである。販売契約に既に係争商標が表示されており、販売契約、領収書、銀行取引明細書がいずれも真実であり且つ対応関係にある場合、市場の商習慣および権利者名義の商標等の事実を結び付け、上記証拠が完全な証拠の鎖を形成していると認定できるとき、指定の期間中に係争商標が本当にかつ有効に使用されたと認定することができる。

21.「その他の不正手段による商標の登録」の考慮要素
【判決要旨】係争商標が「その他の不正手段による商標の登録」に該当するかどうかを判断するために、係争商標の元の出願人の商標登録出願、関連商標の譲渡、譲受人の商標登録出願等の状況を総合的に考慮することができる。関連企業の商標登録出願および関連行為も、適切な状況において考慮に入れることができる。

(出所 中国最高裁の公式サイト)