このほど、中国最高裁判所は、その知的財産権法廷(以下、法廷という)の種子産業における知的財産権の司法保護に関する5つの判例を発表し、種子産業の活性化のために良好な法的環境を整え、品種権所有者が効果的に権利を保護できるよう指導した。
同法廷は先頃、植物新品種権侵害をめぐる2件の最終(終審)判決を言い渡した。この2件はいずれも無性繁殖の登録品種に関するものである。両案件の品種権所有者による最善の努力、そして真摯な立証責任の果たし方の違いにより、両案件の結果は大きく異なるものとなった。「紅運来」パイナップル品種権侵害案件において、登録品種の標本は農業農村部の植物新品種サブテストセンター(上海)に保管され、登録品種権所有者は被疑種苗の検査用サンプルについて真摯に立証責任を果たして、侵害被疑種苗が良好な活性を持っていることを保障したため、侵害被疑種苗が登録品種「紅運来」の繁殖材料であると証明され、最終的に二審で勝訴し、経済的損失及び権利保護に使った合理的な費用として107.5万元の高額賠償を獲得した。「露辛達」ジャガイモ品種権侵害案件において、品種権所有者は真摯な立証責任を怠り、テスト機関に提供した繁殖材料は登録品種の繁殖材料に属することを説明できなかったことで、侵害被疑のジャガイモの茎葉と登録品種「露辛達」ジャガイモが同一性を有するという主張の根拠は不十分となり、二審判決は訴訟請求を棄却した。 この2つの案件は、品種権所有者が効果的に権利を保護するための指針として、積極的な意義を有するものである。
育種材料の技術秘密侵害紛争の場合、育種材料は一般に市販されておらず、直接参考となる市場価格がないため、その販売価格を通じて実際の損失又は権利侵害による収益を計算することが困難で、権利侵害賠償の算出が裁判の難関となっている。今回発表されたトウモロコシの近交系の親品種に係わる技術秘密侵害紛争案件において、親品種の技術秘密侵害で権利侵害者が負担すべき具体的な賠償額について、二審判決は、同親品種の育種のコスト、特徴と形質などの競争上の優位性やその代替可能性、その交雑種の市場利益への寄与率などを考慮して決定することができるとした。トウモロコシ交雑種の市場への親品種の収益面の貢献は、品種管理権取引におけるトウモロコシの育種成果の収益を分配するための業界の慣行を参照した上で、権利侵害の状況を考慮して、保護された品種の収益の割合を適切に増加させることができる。本判決は市販価格が分からない作物育種材料の技術秘密侵害に対する損害賠償額の算定について有益な検討を行っている。
「利和228」トウモロコシの植物新品種権侵害案件において、二審判決は、先に発効した種子に係わる刑事判決によって確定された事実、即ち刑事被告人が無許諾で権利侵害種子を販売したという事実は、民事侵害訴訟において権利者が立証する必要のない事実として利用できるとした。また、先に発効した民事判決及び黒竜江省農作物品種審定委員会の広告に基づいて、権利侵害被疑品種の「哈育189」が登録品種の「利和228」と同一品種であると認定した。この認定は、法に基づいて権利者の権利保護のハードルを下げ、「刑事」「行政」「民事」の効果的な連携を実現し、植物新品種権の全面的な保護と共同保護を着実に実行している。
(法治網から翻訳)