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商標審査実務の変化について――商品分類表の制限を突破した事件を例として

時間:2012-12-21作者:

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   商標法第19条には、「商標登録を出願するときは、定められた商品分類表に基づき商標を使用する商品類及び商品名を明記しなければならない」との規定がある。ここで言う「商品分類表」とは中国商標局がニース分類に基づいて編纂した『中国商標に関する商品及び役務の類似基準』を指している。実際の審査実務において、出願人は商標登録出願をするときに商品分類表に基づいて商品類及び商品名を明記しなければならないのみではなく、商標局、商標評審委員会(以下「TRAB」と称する)、裁判所は実体審査を行なうときも、商品分類表に基づいて商品の類否を判断した上で、更に商標の類否を判断するとの流れになっている。この判定方法は場合によって完全に公平なものとは言いかねる。例えば、商品分類表によれば、第9類の商品「コンピュータ用プリンター」と「コピー機」とは互いに非類似であるが、一般消費者にとっては、もし同一又は類似の商標が「コンピュータ用プリンタ」と「コピー機」に付されて使用すると、それぞれ商品の出所について区別することが出来ない可能性が考えられる。また、第25類の「シャツ類」と「水泳着」はそれぞれ異なる類似群に区分される商品であるが、一般消費者の立場から見ると、両者は販売場所、購入経路、主要原材料、消費対象などの面において類似するところが多い。そこで、単に商品分類表に従ってこれら商品を類似の商品であると認定しない場合は、先行商標権利者の権利保護にとって公平に欠けた瑕疵があると言える。

    但し、最近の審査実務から、上記問題に関して商品分類表の適用に変化が見えた。審査機関の商品類否に対する判断は、原則上商品分類表に基づくものであるが、先行商標権利者の実体権利を保護するため、商品分類表の制限を突破したときもある。例えば、ミズノ株式会社が第4572969号「美津豹」被異議商標に対して提起した異議再審事件において、TRABは商評字[2012]第44991号裁定書にて、被異議商標の指定商品「帽」などがミズノ社の引用商標の使用商品となる「衣服」とは機能用途、販売ルートなどの面において類似するところがあるとの理由で、両商標が商標法第28条に定められた同一又は類似の商品に使用する類似の商標を構成したと判断した。また、イタリアのFORALL CONFEZIONI S.P.A.社が、第4024676号「PALZILERI」被異議商標に対して提起した異議再審事件では、TRABは商評字[2012]第42660号裁定書にて、被異議商標の商品となる「ウエディングドレス、ダンス衣装」が引用商標の商品「服装」と類似すると判定した。さらに、スウェーデンのASSOCIATED SWEDISH STEELS AB社が、第1974930号「一?百」被異議商標に対して提起した異議再審事件において、TRABは商評字[2010]第20189号裁定書にて、被異議商標の「金属製広告柱」など商品が、引用商標の「帯鋼、鉄」など商品と原材料、機能用途、販売ルートなどの面において類似するため、両者の商品は緊密に関連していることを理由に、両商標の商品が類似すると判断した。

    上記事件から、商品分類表は商品の類否を判断するに際し、唯一なる根拠若しくは基準ではないことが分かる。また、商品は同一区分に属するか否かも商品の混同若しくは混同可能性を判断するときの唯一の標準でもないことが言える。両商標は混同誤認を生じるおそれがあるか否か、商標法的な類似を構成するか否かを判断するときは、両者商品の効能、用途、主要原料、生産部門、販売経路、販売場所、対象となる消費者等の面から総合的に考察する必要がある。また、関連公衆が商品若しくは役務に対する一般的な認知と、先行商標の独創性や知名度をも十分に考慮する必要がある。最近審査実務の上記変化が、審査部門が商標権の実体権利への尊重を反映している一方、関連公衆の合法権益への有力保護をも示している。