2017年4月20日、北京市高級裁判所が新たな「専利侵害判定指南」を公布した。
今回新たに公布された「専利侵害判定指南」は、裁判業務における最優先課題を解決し、裁判基準を統一し、北京市高級裁判所の裁判業務経験の総括を融合させ、最新の関連法律法規及び司法解釈に適合するため、2013年に公布された「専利侵害判定指南」を改正したものである。
新「専利侵害判定指南」は計153条、2万1千字、専利関連裁判における発明及び実用新案の専利の保護範囲の確定と侵害判定、意匠の保護範囲の確定と侵害判定、侵害行為の認定、及び専利侵害の抗弁の6つの部分から成り、請求項の解釈に対する原則、対象、方法及び侵害判定の規則、侵害行為の認定及び抗弁について体系的に規定し、また中国の専利司法実務で目下注目されている標準必要専利やグラフィッカルユーザーインターフェイスなどについても初めて規定している。今回北京高級裁判所は、中国語版以外にも、英語版、日本語版の判定指南を公布した。
新たに公布された判定指南を整理し、同指南の6つの部分に照らして、注意点を以下の通りまとめる。
一、発明、実用新案の専利権の保護範囲の確定
第2条及び第4条はそれぞれ請求項の解釈の公平原則と発明目的に符合する原則について規定しており、専利が克服しようとする技術的欠陥の技術案や全体的に従来技術に属する技術案、専利の技術問題を解決できず、専利の技術効果を実現できない技術案は保護範囲に入らないと指摘している。
第10条は、二審期間に専利権が無効宣告された場合、一般に一審判決を破棄するが、二審の審理を中止することもできると規定している。
第24条は、請求項の使用環境特徴の限定作用を規定している。
二、発明、実用新案の専利権の侵害判定
第42条と第56条は、請求項の機能的特徴の均等特徴の意味及び判断時点を規定している。
第57条は、請求項に「少なくとも」、「超えない」等の用語で数値特徴を限定する場合、均等原則が適用されないことを規定している。
三.意匠専利権の保護範囲の確定
第66条は、意匠の保護範囲を確定する時に全体的対比原則を採用することを規定している。
第67条は、権利者は書面による資料を提出して意匠の設計要点を説明し、意匠の独創部分とその設計の内容を説明でき、簡単な説明欄に設計の要点が記載されている場合は、参考に用いることができ、設計の要点とは、設計が従来の設計と区別され、一般消費者に顕著な視覚的影響を及ぼす設計特徴を指すことを規定している。
第73条は、グラフィカルユーザインタフェース意匠の保護範囲は設計要点を結び付けて製品の意匠設計図により確定し、動的なグラフィカルユーザインタフェース意匠の保護範囲は簡単な説明における動的変更過程に対する記述を結び付けて動的変更過程を確定できる製品の意匠設計図により確定することを規定している。
四、意匠専利の侵害判定
第77条は、グラフィカルユーザインタフェース意匠の製品の種類を確定するには、該グラフィカルユーザインタフェースを使用する製品を基準にすると規定している。
第83条は、意匠が同一または類似であるかどうかを判断するには、当事者に対して関連設計特徴のデザインスペース及び従来の設計の状況を証明する証拠を提出するように要求することができると規定し、かつデザインスペース及び従来の設計の状況の定義を具体的に提示している。
第86条、第87条はそれぞれ、静的なグラフィカルユーザインタフェース意匠及び動的なグラフィカルユーザインタフェース意匠の侵害判定原則を規定している。
五、専利侵害行為の認定
第117条は、監製行為を行った委託者は、受託者の侵害を明らかに知る状況において共同侵害者になると規定している。
第121条は、生産経営を目的として特定の技術案を実施するよう他人を積極的に勧誘し、かつ他人が実際に権利侵害行為を実施した場合、行為者は共同侵害者となり、連帯責任を負うと規定している。
六、専利侵害の抗弁
第126、第127条は、悪意の専利権取得の状況、及び悪意の専利権取得の状況において原告の訴訟請求の棄却を裁定できることを規定している。
第149から第153条は、標準必要専利に係る案件における専利権者及び被疑侵害者双方の義務及び義務違反の結果について規定している。